eスポーツは黒船となるかBACK NUMBER
「1回目」のハードルが凄まじく低い。
eスポーツはITとスポーツの申し子だ。
text by
八木葱Negi Yagi
photograph byNegi Yagi
posted2017/03/08 17:00
オランダのエールディビジでは、全クラブがeスポーツのプロと契約してリーグ戦をする、という計画も進んでいるという。
「1回やってみる」ハードルがとにかく低い。
もともと、家にいながらにしてインターネットを通じて対戦したり、チームで協力したりという体験ができるeスポーツは、いわばスポーツとITの申し子である。「1回やってみてよ」、「1回見てみてよ」というあらゆるジャンルにとって最大のハードルを、簡単に越えられるというアドバンテージは極めて大きい。
生中継文化とも相性がよく、日本eスポーツ選手権の決勝は、のべ10万人を超える視聴者がリアルタイムで観戦した。
そして同時に、eスポーツというジャンルにおいても、「人が集まる」という単純な現象が人に残すインパクトはやはり強い。日本でも徐々にオフラインでの大会が増えていて、リアルイベントとしてのeスポーツを体験する機会は、都市圏に住んでいればだいぶ身近になった。
家とイベント会場のどちらでも、試合も観戦もできるという利点を持つeスポーツは、「0を1にするハードル」が低く、「1が100になる機会」が豊富なジャンルと言えるだろう。日本でも根付くか、という問いの立て方をされるケースも多いが、逆にこれだけ要素が揃っていて根付かないと考える方が難しいとさえ感じる。問題は、いつ、どんなきっかけで、そしてどんなタイトルが有望なのか、なのだ。
石川遼の言葉に感じた、爆発のヒント。
日本eスポーツ選手権の表彰式の前に、会場ではゴルフの石川遼からのビデオメッセージが放送されたのだが、自身もかなりのゲーマーだという石川の言葉に、そのヒントがあるように感じた。
「eスポーツのトップ選手の手元を見ていると、とても同じ人間とは思えない凄さで、尊敬しています」
100mを信じられない速度で走る人を見るのが楽しいように、人間離れした反射神経、動きの正確さ、深い思考力を発揮する人を見るのはやはり楽しい。
そう、彼らがどんな能力を今発揮しているのか。それを今以上に伝える方法の発見が、eスポーツの爆発の最後のハードルなのだ。