“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
浅野拓磨は“賢く体をぶつける”。
小柄でも球際で負けない方法論。
posted2017/02/18 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
浅野拓磨=スピード。
誰もがそう思っていると思う。だが、その“スピード”の概念を、多くの人は固定観念で見てしまっている気がする。
確かに速い。チームで行った30m走で「100%で走りましたが、そこまで速いタイムとは思わなかった」と本人も驚いたように、ウサイン・ボルトやオーバメヤンより速い3.67秒を記録。走り終えた後に計測スタッフがどよめき、彼のもとにやって来た。
「最初『凄いぞ!』とか、『オーバメヤンだ!』とか言って来て、冗談を言っているのかな? からかっているのかな? と思ったら本当だった」
彼のスピードは決して裏への抜け出しやスプリントに反映されているだけでは無い。彼は175cmに満たないサイズだが、驚異的なスピードのおかげで、フィジカルコンタクトが激しいドイツの地でも対等に戦うことが出来ていると言って良い。
球際で「コースを支配する」というアプローチ。
彼が見せる球際の激しさは、ボールではなく人に行くことで良さが発揮される。一言で言えば、“正確なフィジカルコンタクト”が出来る選手だ。
「上半身や身体のぶつけ合いだったら負けないという気持ちはある。ボールに行くというよりは、身体と身体のぶつけ合いで“コースを支配する”という考え方が正解かもしれません。ボールに行けないんだったら、相手がボールに触る前や、一度ボールを触らせておいてから当たることによって、自分がそのボールのコースを奪えるわけです。
相手選手がボールを蹴った位置を見て、そのコースに対して先にポンと自分が入れば良い。そこから相手がついて来たとしても、それはもう球際の勝負で先手を取っている。時にはぶつかってくる相手の反動を生かしてさらに前に出られる。それは考えたというより、自然と身体に染みついたものだと思います」