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浅野拓磨は“賢く体をぶつける”。
小柄でも球際で負けない方法論。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2017/02/18 11:30

浅野拓磨は“賢く体をぶつける”。小柄でも球際で負けない方法論。<Number Web> photograph by Takahito Ando

フィジカル的なテクニックも生かして、浅野は海外1年目ながら定位置を確保した。精神面では同僚の細貝萌の存在も大きいはずだ。

浅野には、ずば抜けた筋バランスという特徴が!

 筆者が取材に訪れたブンデス2部・第19節のフォルトナ・デュッセルドルフ戦でも、屈強な相手に対してフィジカルコンタクトで一切引けを取らなかった。ぶつかりながらも前への推進力を存分に披露し、チャンスに絡んだ。自身はノーゴールに終わったが、フリーランニングから2点目を演出するなど、シュツットガルトのハネス・ボルフ監督も攻撃の起爆剤として大きな信頼を寄せている。

 その助けとなっている肉体の使い方は、彼が口にしたように、彼のサッカー人生の中で無意識のうちに身体に染み込ませたものだった。

 スピード以外に、浅野の特徴の1つとして“ずば抜けた筋バランス”がある。四日市中央工業高時代から、彼の筋肉は非常にしなやかで、なおかつ強固だった。鋼の肉体と言うより、柔軟性に富んだ肉体と言うイメージだ。

 腰回り、肩回りの筋力がしっかりあるのに加えて、全体の箇所をつなぐ筋肉のつき方、速筋と遅筋のバランスが非常に良い。それが爆発的な瞬発力とスピードの持続性、動きながらのフィジカルコンタクトの強さを実現している。

高校時代から“ただのスピードアタッカー”ではない。

 だからこそ高校時代から、浅野は最終ラインの裏を狙い続ける“ただのスピードアタッカー”ではなかった。

 たとえば、フィジカルコンタクトでボールを運びやすいコースを作る。また、ボールを受ける前に加速して、身体をゴールに向けた状態でボールを受けるなど、特徴のスピードを最大限生かせるように工夫しながらプレーしていた。

 その精度が、プロに入ってさらに高まっている。シュツットガルトでも自らの武器として、ブンデスリーガへの適応に一役買っているのだ。

 この工夫のベースには、小学校時代に浅野が指導者から言われたある一言がある。

「守備も攻撃も、相手に背中を見せたら勝ちなんだ」

【次ページ】 「あ、サッカーって背中見せたら勝つんや(笑)」

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浅野拓磨
シュツットガルト

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