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タカマツペア、強さの源はギャップ。
リオ五輪の逆転劇生んだ無理と道理。
posted2017/01/09 07:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Shinya Mano/JMPA
飾らない言葉に万感の思いを込めた。
バドミントン女子ダブルス決勝で劇的な逆転勝利を収め、日本に初の金メダルをもたらした高橋礼華、松友美佐紀の2人は、表彰台でそっと涙をぬぐった。
高橋は「まさかオリンピックで君が代が流れるときが来るとは思わなかった。金メダルは重い。すごく重い」と感無量の表情を浮かべた。
松友は「一番高いところを目標にはしていたが、最後まで勝ち続けられるとは思っていなかった。諦めないで頑張って良かった」と穏やかな口調だった。2人は言葉を噛みしめていた。
プレースタイル、性格は正反対でも思いは同じ。
予選リーグから決勝まで危なげなく勝ち上がってきたタカマツの相手は、デンマークの長身ペア、カミラ・リターユヒル、クリスティナ・ペデルセン組だった。
動きの硬かった第1ゲームを18-21と落とした2人は、第2ゲームを21-9で取り、流れを取り戻して第3ゲームに入って行った。
ファイナルゲームでは一進一退の攻防が続いたが、タカマツは16-16としたところから相手に3連続ポイントを奪われ、16-19と絶体絶命のピンチに陥った。
このゲームでは、良い流れをつかみかけそうなときに相手のネットインが決まって点を失う場面が2度、3度とあった。興味深いのは2人がそこで考えていたことだ。
「流れは完全に相手に行っていた。でもやっぱり負けたくなかった。何をしてでも拾って打ってやろうと思った」と強気で押そうとしたのは高橋。そして、一方の松友は、「接戦のあの場面であの球を打てるというのは、純粋にうまいと思っていた」と自然体で試合を楽しんでいた。
このギャップこそ、タカマツの強みだった。体格、プレーの特徴、性格がまったく正反対のペアには、無理と道理が同時に備わっていた。