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タカマツペア、強さの源はギャップ。
リオ五輪の逆転劇生んだ無理と道理。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2017/01/09 07:00
優勝が決まった瞬間、高橋はコートに仰向けに倒れこみ号泣。一方の松友は、真っ先に高橋と抱き合いたかったが「(高橋を)見ると転んでいて(笑)」と、先にコーチと喜びのハグをかわした。
「相手におっと思わせたいな」と松友は思っていた。
しかし、16-19となったときに諦めなかったのは2人とも同じだった。
松友の頭に浮かんだのは「もう負けるのかな、もういかれるのかな。でも、その中で1回でもいいから、相手におっと思わせたいな」ということ。
高橋は「一瞬だけ『あ、やばい、本当にここで負けちゃうのかな』と思ったけど、前日に(レスリングの)伊調馨さんが最後に逆転勝ちしたのを思い出した。ここからでも逆転はあり得ると思った」。
無心でプレーして最後は5連続ポイント。21-19で勝利を手にした。その瞬間、高橋はコートに倒れ込み、松友はガッツポーズをしていた。
ランキングを大切にしながらも、練習に集中した。
世界ランク1位で臨んだ初めてのオリンピックだったが、2人に変なプレッシャーはなかったという。
目の前の試合に全力で取り組むことでバドミントンを楽しもうというメンタルを持つようになったのは、初めて世界ランク1位となった'14年以降、勝てない日々が続いたことがきっかけだった。
世界1位のプレッシャーに押しつぶされそうになり、大会では負けが込み、昨年の世界選手権ではベスト16止まりだった。
さまざまなことを考えた末に思い至ったのは、ランキングを大切にしながらも、試合の中でトレーニングの成果を出すことにフォーカスするという考えだった。試合運びから邪念が消え、伸び伸びとプレーできるようになった。
すると、今年3月の全英オープンで初優勝。最も格式の高い伝統の大会を制して本来の力を取り戻した。