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日本代表の未来のサイドバック!?
桐光学園の主将タビナスに注目せよ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/12/26 17:00
高校選手権連覇を目指す東福岡、高円宮杯U-18CSを制した青森山田、高校総体優勝の市立船橋らと共に、選手権優勝を競う桐光学園のタビナス。
「日本人らしいサイドバック」には育てない。
鈴木はプラン通り、すぐに彼を左サイドバックにコンバート。
182cmの大型サイドバックは、慣れないポジションに最初は戸惑いを見せていたが、すぐに抜群の吸収力で必要な技術を身につけていった。
サイドバックとしてのベースが出来上がるまで、鈴木が彼へのアプローチで気をつけたことが「型にはめないこと」だったという。
「彼の身体能力はやはり日本人とは違うものがあって、スプリント力、跳躍力がずば抜けていて、身体感覚も独特のものがあった。そこで変に日本人選手と同じ感覚、アプローチを教えてしまうと、彼特有の『感覚』が損なわれてしまいかねない。(中学生の時の所属チームである)トリプレッタでも、彼はノビノビと自分の力を発揮する環境の中でやっていたからこそ、ポテンシャルがより広がっていたのだと思う。だからこそ、高校でもなるべく彼の『感覚』を大事にしながら、原理原則の部分はしっかりと伝えて、基礎は固めながらも、『日本人らしいサイドバック』には育てないようにしたんです」
ピッチの縦105m全部が彼のプレーポジションであることを伝え、その舞台でいかに自分の能力を発揮出来るか考えてプレーする――。
鈴木は積極性と献身性のバランスを考えながら、ディフェンス、突破、クロス、そしてポジショニングなど細かい部分までタビナスの意識に落とし込ませ、彼の発想の引き出しを増やす作業を熱心に続けた。
2試合だけ、CBとして起用してみたが……。
「中学のときに桐光学園の練習に参加すると、『左サイドバックに入ってみて』と鈴木監督に言われて、その指示通りにポンとサイドバックに入ってプレーをして……気が付いたらずっと左サイドバックで育ってきました。いろんなことを教えてもらった」(タビナス)
高2になるとすぐさまスタメンに抜擢された。だが、鈴木は2試合だけCBとしてタビナスを起用したことがあった。
2015年の高校選手権・神奈川県予選の準々決勝・桐蔭学園戦と、準決勝・湘南工科大学附属戦でのこと。あるチーム事情から、タビナスをCBに起用する事態となったのだ。
だが、「どこか窮屈そうにプレーをしていた。いつもの躍動感が消えていて、CBだと彼の良さを消してしまうことに改めて気がついた。やっぱり彼の運動量、アップダウン能力、守備力とバイタルエリアでの破壊力を引き出すには、サイドバックが適任なんだなと。生粋のサイドバックになったんだな……ということに気がついたんです」
鈴木はその次の試合、決勝の横浜市立東戦で再びタビナスを左サイドバックに戻した。