球体とリズムBACK NUMBER
ジダンから鹿島への決定的な注文。
「夢と希望を持ち、プレーし続けて」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/12/20 11:20
レアル・マドリーと鹿島アントラーズに大きな力の差があったこと、CWC決勝が接戦だったこと。そのどちらも真実である。
最後は地力の差を見せ付けられる形だった。
「前に人数を増やしたかったから、フォーメーションを変えた。必要にかられたのだ」とフランス人指揮官が試合後に話したように、後半途中からマドリーはあらゆる手を使って鹿島を攻め立てた。Jリーグ王者も勇ましくそれを受け止め、時には惜しい見せ場もつくった。後半終了間際に永木亮太がペナルティーエリア手前までボールを運んでいるときには、スタンドのいたるところから、「打て、打て」と願うような声が聞こえた。
延長に入ってからは、マドリーが地力の差を見せつけて2点を奪取。ロナウドがまずは相手の一瞬の隙を突いてネットを揺らし、さらにはトニ・クロースのシュート気味のボールを難なくトラップし、同じような位置から勝利を決定づける一撃を放った。
「観ている人は結果で判断すると思うので、(鹿島が)けっこうやれたと思ったかもしれないですけど、僕はかなりしんどかった。後半からはずっと、ものすごい威圧感を感じていました」
CBとしてロナウドやベンゼマと対峙した昌子の言葉だ。
「鹿島はとてもよくやったよ」「手を焼かされたね」
現在のクラブフットボール界で、「欧州一」は「世界一」と同義である。つまりこの大会には、開幕前から厳然たる優勝候補が存在し、彼らは相手や状況によって力をセーブしたり、ギアを上げたりする。常に100%ではなくとも、大抵の試合で白星を収めることができるからだ。同じ土俵に上がっているようでも、実際にプレーする選手たちの見ている景色はそれぞれに違うのだろう。
「別の大陸のチームと対戦するときには、なにが起こっても不思議はない。鹿島はとてもよくやったよ」とトニ・クロースが言えば、「(鹿島は)すごく良いチーム。僕らもかなり手を焼かされたね」とルーカス・バスケスも同調する。これらの印象そのものは偽りではないはずだが、優勝したこともあって、やはりその口ぶりには余裕を感じた。
フットボールは番狂わせの起こりやすい競技と言われるが、レベルの差が大きければ、当然、アップセットは期待しにくい。2007年の浦和も、2008年のガンバ大阪も、今年の鹿島も欧州王者を相手に健闘したが、最終的に結果は得られなかった。