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復帰間近の武藤嘉紀、高すぎる勝算。
岡崎らマインツ歴代FWと比べても……。
posted2016/12/21 11:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
武藤嘉紀はドイツ人のチームメイトたちと談笑しながら、グラウンドに姿をあらわした。
若手選手の肩に手をまわし、ジョークを飛ばす。武藤が日本人記者の存在に気がついた素振りを見せると、今度はチームメイトたちが日本語を次々に口にして、武藤をイジりだす。
ドイツにきてまだ1年半もたっていないはずの24歳の青年は、マインツの重鎮のような存在感を放っていた。12月12日マインツでは、後半に向けた体力測定が行なわれていた。
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武藤は言う。
「あれは、若い選手が多かったからですよ。それにドイツ語だってまだまだ。話す力も、聞く力も、全然足りないですよ」
そのあたりのスマートさは変わらない。ただ、こうも付け加えた。
「もちろん、今もずっとドイツ語は勉強していますけどね」
スマートさの裏には隠しても隠しきれない、強烈な負けず嫌いな一面ものぞかせる。そんな武藤を取り巻く状況は、この1年でずいぶん変わった――。
2015年の上半期にFC東京でゴールを量産して、毎日のようにメディアに取り上げられる日々を送った。7月にドイツへわたってからは、日本とのカルチャーの差もあって、ピッチの外では平穏さを取り戻せたものの、ユニフォームを着ているときのメディアからの注目は変わらなかった。あまりの過熱ぶりに、取材規制がかかったほどだ。
度重なるケガで出場機会が減り始める。
実際に、ピッチの上で武藤は次々と結果を残していった。開幕3試合目でいきなりの2得点。高原直泰以来となるハットトリックも達成した。
しかし、今年の2月6日のハノーファー戦で、右ひざの外側靭帯を痛めてしまった。さらに、早く復帰しようという思いがあだとなり、リハビリのペースをあげていくなかで再び外側靭帯を痛め、昨シーズンはわずか20試合の出場におわった。
今シーズンが始まると、シュミット監督の慎重な起用法の中でも、少しずつ出場機会を増やしていく。しかし、9月29日のELガバラ戦で、アクシデントに見舞われてしまう。
先発した武藤が先制ゴールを決め、コルドバとの2トップを採用したチームは躍動感を取り戻し、一度は1-2とされていた状況から3-2と逆転に成功した。しかも、この試合の前にはシュミット監督から2トップが機能すれば、次のリーグ戦でも採用するつもりだと聞かされていた。
しかし試合終了直前の競り合いで、今度は右ひざの内側側副靭帯を痛めて負傷交代を余儀なくされた。