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畠山健介「W杯で勝てるなら……」
フィジー戦の戦略意図を解説する。
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byAki Nagao
posted2016/12/08 11:00
フィジーのオープンプレーでの迫力に押されてしまったジョセフ・ジャパン。試行錯誤だとすれば、実りがあったことを期待する他ない。
リードを奪われ、ハーフタイムで交代を言い渡された。
しかし、僕らにも遠征の疲労が出て来たのか、ぬかるんだグラウンドに足を取られたのか、少しずつフィジーの激しいランと巧みなオフロードパスにゲインを許すようになってしまった。
前半32分、フィジーの7番が2枚目のイエローカードで退場。フィジーは残りの時間を14人で戦うこととなった。
勝てる――。6-14と少し点差はあるが、ポテンシャルの高いフィジーと言えど、残りの時間の数的不利は相当厳しいはずだった。そんな状況が逆にフィジーの選手たちの考えをシンプルにしたのか、より激しくゲインラインを取ろうとしてくる。
フィジーが14人となった3分後の前半35分、再びフィジーがトライ。キックも決まり、6-21。幾度となく訪れる危険なシチュエーションをキックで回避するも、タッチ(外)には蹴らず相手にカウンターさせるというゲームプランを遂行する。キックするたびにフィジーのインプレーの(実際にプレイしている)時間が増え、こちらのピンチが何度も訪れる。
6-21のまま前半終了。ロッカーに戻ると、僕とヌノ(布巻峻介)が交代を言い渡された。ロッカーではジェイミー(・ジョセフ)の声が飛んだ。FW(少なくとも僕)は、スクラムとラインアウトがフィジー相手に好調なだけに歯痒い思いだった。
結果的に、フィジーの土俵で試合をしたことが敗因。
後半、試合再開早々にフィジーがトライ。ゴールも決まり、6-28。11分にまたもフィジーがトライ。キック成功、6-35。次々とリザーブメンバーが投入され、マツ(松島幸太朗)のトライなどで10点差まで詰めるが、最後はフィジーがペナルティーショットで3点を加え、25-38でノーサイド。
結果的に、フィジーの“土俵”で試合をしてしまった。昨年のW杯では、セットピースが強い南アフリカとスコットランドにはセットピースを極力避け、大きな相手を走らせて疲れさせようとした。一方、サモアとアメリカにはセットピースで優位に立てるだろうから、セットピースでプレッシャーをかけた。相手の強みを消し、こちらの強みを活かすゲームプランを遂行した。