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畠山健介「W杯で勝てるなら……」
フィジー戦の戦略意図を解説する。
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byAki Nagao
posted2016/12/08 11:00
フィジーのオープンプレーでの迫力に押されてしまったジョセフ・ジャパン。試行錯誤だとすれば、実りがあったことを期待する他ない。
今年秋のフィジーの成績はイマイチだったが……。
実際、2012年に僕は日本代表としてフィジーとPNC(パシフィック・ネーションズカップ)で対戦した時、それまで感じたことのない圧力をスクラムで感じた。過去、優勢だったスクラムで何度も押し込まれた。
昨年のW杯では、過去のテストマッチやW杯でフィジーをスクラムで何度も押してきた強豪国でさえ、逆にフィジーにスクラムで押し込まれる場面が増えた。
フィジアン・マジックに強力なスクラム。国内産の強みと海外製の技術が合わさり、フィジーは恐ろしい成長を遂げた。
しかし、フィジーの今秋のテストマッチ・ツアーはイマイチな戦績だった。W杯翌年ということもあってか、アイランダーならではの気まぐれな気質故か、単純なモチベーションの問題か、イングランドとのテストマッチ(11月19日)では15-58と大敗。その前週のバーバリアンズ戦(11日)は7-40と厳しい遠征となっていた。
蹴らず、敢えてカウンターをさせる戦術。
日本はフィジーとそれまで16回対戦して3勝しかできていなかったが、勝機はあった。アルゼンチン戦からの3試合で、キックを効果的に使ってきたジェイミー・ジャパン。フィジーに対して、危ない場面ではタッチキック(ボールをエリアの外に出すキック、再開は基本的にラインアウトから)でエリアを稼ぎ、セットピースでプレッシャーをかける。その正攻法で行くだろう――と思っていた。
しかしジェイミーは、タッチには蹴らず、フィジーに“敢えて”カウンターをさせて相手を動かし、彼らの機動力を奪う戦術をミーティングで僕らに説明した。エディー(・ジョーンズ)、JK(ジョン・カーワン)時代には、フィジーに試みたことのない作戦だった。
吉と出るか、凶と出るか――。ヴァンヌのラグビーファンたちに見守られながらのキックオフ。前半20分までジェイミーのゲームプラン通り、うまくいっていた。フィジーはこちらをドミネート(前進する相手を押し返す)しようと激しく来る。トライを許すが、9番のフミ(田中史朗)さん、10番のユウ(田村優)からのキックを効果的に使い、スコアは3-7。ここからフィジーはフィットネスが落ち、運動量が落ちるはずだった。