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サトノダイヤモンドがジンクス破る。
3冠を3強で分け合う最強世代の結末。
posted2016/10/24 11:15
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
ジンクスを破るには、やはり飛び抜けた強さが必要なのだろう。
MLBではシカゴ・カブスがナ・リーグ制覇を果たし、1945年のワールドシリーズでヤギを連れたファンの入場を拒否してから同シリーズ出場がないという「ヤギの呪い」のジンクスを打ち破った。レギュラーシーズンで100勝を超える圧倒的な強さが、今年のチームにはあった。
翌日(日本時間では同日)、日本の競馬界でもジンクスが2ついっぺんに破られた。
クラシック三冠の掉尾を飾る第77回菊花賞(10月23日、京都芝3000m、3歳GI)を1番人気のサトノダイヤモンド(牡、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)が優勝。「ディープインパクト産駒は平地の芝3000m以上で勝ち鞍がない」というジンクスと、「『サトノ』の冠で知られる里見治オーナーはGIを勝っていない」という2つのジンクスを、見事に吹き飛ばしてしまった。
道中は縦長になった馬群の中団を進み、持ったままで直線へ。余裕をもって抜け出し、2着を2馬身半突き放した。
まったく危なげない勝利だった。ゴール前で手前を右に替え、最後の5完歩ほどは流すようにしてフィニッシュした。
ダービーで左後ろ脚を落鉄しながら鼻差の2着になった強さは、やはり並ではなかった。
完璧に折り合ったわけではないのにこの強さ。
この菊花賞のプレビューで、筆者は「3000mはベストではない」と書いた。池江調教師もそうコメントしていた。それはおそらく正しい。
何度もリプレイを見直したが、2周目の3コーナーでペースが上がるまでは掛かり気味で、鞍上のクリストフ・ルメールが後ろに重心をかけて抑えていた。完璧に折り合っていたわけではないのに、これだけの強さを見せたのだ。
ウオッカやエピファネイアなどのように、掛かり気味でカッカしながら走ったときのほうが弾ける馬もいるが、サトノダイヤモンドのこれまでのレースを見ると、そういうタイプではないと思われる。つまり、今回より短い距離、2000mから2400mぐらいでは、もっと強いレースができる、ということだ。いやはや、恐ろしい。