ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
タイがいつの間にかゴルフ強豪国に!?
“タイ通”塚田好宣が指摘する2要因。
posted2016/10/20 08:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
在位70年を誇った英雄は、彼ら、彼女たちの活躍をどれほど知っていただろうか。
ちょうど今回のコラムを練っていた10月13日、タイのプミポン国王が死去した。1946年に王位を継承して以来、長きにわたって微笑みの国のシンボルとして敬愛されてきたことは、ここ数日の報道からもうかがえる。
ASEANの主要国であるタイはここ数年、軍部のクーデターなどにより経済的には停滞が続いているそうだ。ところがプロゴルフ界においては、男女ともにトップレベルでの躍進が目覚ましい。
ことし5月、米女子ツアーで3連勝を飾りトップ選手に仲間入りしたアリヤ・ジュタヌガンはまだ20歳。実姉のモリヤも同じ米ツアーを主戦場としている。日本の女子ツアーでは2013年にO・サタヤがタイ出身選手として初優勝。男子では日本のシニアツアーで、ことし50歳になったプラヤド・マークセンが賞金レースを独走している。
お隣のアジアンツアーを中心に、勢いは加速中。男子の世界ランキング300位以内に現在7人がランクインしており、アジアでは日本、韓国に次ぐ多さである。
タイはもともと多くのゴルフ場を有し、国外からの旅行者を呼び寄せてきたが、今では一流のツアープロの輩出国になりつつある。
現役選手なのに、タイ選手の通訳に狩りだされる男。
その現状を、タイを語らせたら右に出る者はいない、とある日本人プロがいる。ツアー1勝の47歳、塚田好宣だ。
彼の特異さを紹介するうえで、手っ取り早いエピソードがひとつ。日本ツアーにはタイ語を操れる関係者が極めて少なく、彼らのインタビューがラウンド後に必要になると、メディアや大会側は途端に慌てふためくことになる。そんなピンチに登場するのが塚田。タイ語で会話できるばかりか、彼らと親交が深く、(道理が通るか否かはさて置き)プレーヤーにして通訳代わりの存在としても頼りにされているのだ。
塚田は父の影響で、中学生の時にゴルフを始めた。丸山茂樹、藤田寛之らと同学年だが、そのキャリアはふたりのエリート・ベテランとは異色そのもの。高校卒業後、1年だけ日本で大学生活(東海大)を送ったあと渡米し、ニューメキシコ陸軍士官学校で英語を学ぶ傍ら、腕を磨いた。