マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
履正社・寺島成輝の“指先”が凄い。
伸びるストレートを映像で解説!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2016/10/18 07:00
秋の国体で初優勝した履正社のマウンドには、もちろんエース寺島成輝がいた。ドラフトでも上位指名は確実だ。
ボールの真上に指がかかることの意味。
この動画の2球目のあとのスローモーションの部分に注目していただきたい。
時計の文字盤でいえば、“11時”ほどの角度から振り下ろされる左腕の指先が、正しくボールの真上にかかっていることがわかるだろうか。
この指のかかり、つまり指先感覚こそが、寺島成輝のすばらしいストレートの根源だ。
2球目、139キロの低め速球に、相手打者が完全に振り遅れてしまった空振りをしている。
肉眼では140キロ後半にもみえるだろうスピード感と、低めに伸びる球道がすばらしい。
さらに、3球目だ。
左打者の外角高目にきまった143キロ。
スイングしたバットの上方をボールが通過したのは、打者が“高さ”を読み違えているから。つまり、ホップしたように見えているからだ。
真タテに全力で腕を振っても、ボールが抜けない。
3球のうち、最初の2球は捕手が構えたミットに寸分たがわず吸い込まれていった「ベストボール」である。
これだけ豪快に、しかも真タテに全力で腕を振って、ボールが高く浮かない、もしくは抜けないのは、ものすごい遠心力に寺島成輝の腕力が負けていないからだ。すでに、大人の肉体といってよいだろう。
それほど磐石の安定感。
踏み込んだ右足がほぼ同じポイントにどっしりと降ろされていることも、あらためて鑑賞しながら検証していただきたい。これも、寸分たがわぬコントロールの理由になっている大切な要素なのだ。
わずか59秒、たった3球の投球。
しかし、映像は雄弁である。
そして、雄弁に語られる映像であればあるほど、そこに映し出される選手の優秀性は高く、その野球は魅力に満ち満ちたものになってくるのである。