マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
履正社・寺島成輝の“指先”が凄い。
伸びるストレートを映像で解説!
posted2016/10/18 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
この映像を見て、思い出したシーンがある。
履正社高・寺島成輝投手の実物を初めて見たのは、たしか2年生・春の大阪府大会。大阪・舞洲スタジアムだったと思う。
履正社高に「スーパー左腕」が入学したことは、その前の年から聞いて知っていた。
私の早稲田大学野球部当時の先輩が、大阪でとある中学硬式チームを運営し、監督もつとめていた方から、「今度の選手は本物のスーパーや!」と力こぶの入った情報をいただいていた。
試合前のキャッチボール。
履正社高の選手たちの中に左腕が何人かいたが、ひと目見て、パッと「あいつだ!」と確信できた。
均整抜群のユニフォーム姿。とりわけ、その下半身の充実は2年生になったばっかりの高校生とはとても思えない。そんな姿だけでも、先輩が期待していた“逸材”であることははっきりわかった。
相手投手との差がはっきりわかる遠投シーン。
加えて、この遠投の伸びは一体なんだ?
ライトポール下。
軸足でトントンと2度、3度リズムをつけただけで、ボールがぐんぐん伸びていく。伸びていったボールがなかなか落ちてこないで、バックスクリーンの向こう側、左中間あたりに位置する捕手のミットにやっと届く。
レフトポール下からも、相手チームの先発投手が「負けじ!」と高くボールを上げるが、こちらは10mほども助走して、それでもバックスクリーン前まで届かない。
寺島成輝。
その名前は、この遠投シーンだけでしっかりと私の記憶の中に刻み込まれたものだ。
投げる動作に現れる抜群のボディーバランス。さらに、体幹、地肩の強さと下半身の粘っこい体重移動。そして何より、ボールが指先にへばりついているような“指先感覚”。
そうだ、この指先感覚だ。