福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西が見た豪州戦、足りなかったもの。
劣勢の時こそ“マジメさのバランス”を。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/10/12 17:00
代表で4年ぶりとなる1トップを務めた本田。先制点をアシストした一方で後半は味方のフォローを受けられない場面が目立った。
1トップの本田が孤立してボールが収まらない状況に。
なぜ日本はパスをつながない選択をしたのか。理由は以下のふたつが考えられます。
(1)プレスに相手の勢いを正面から受け止めるより、前に蹴って陣地を挽回する
(2)ボールを保持して横パスをかっさらわれた時のリスクを回避する
チーム全体が守備に意識を置いていた中で、日本は前半以上に押し込まれた。それは本来トップ下の位置を務めた香川のポジションを見ると分かりやすいです。守備ブロックを作る中で香川も自陣ペナルティエリア付近まで戻って守備をする場面が増えた。シュートまでいかせずボールを跳ね返しても、そのセカンドボールを相手に拾われると、チーム全体がなかなか押し上がらない。
その影響を大きく受けたのは1トップに入った本田でした。本田は守備でファーストディフェンダーをこなしつつ、相手のマークを受ける中でボールキープして攻撃の起点になろうとしていたと思います。ただ後半は本田がボールを収めようとしても、すでに相手守備陣3、4人に囲まれる状況になった。
香川や原口、小林といった2列目との距離感が大きく開いてしまったことで、起点になる機会もほぼなくなってしまいましたね。原口と小林は前半から相当守備で頑張っていましたし、香川もやはりコンディションが本調子ではなかった。小林も決定機(74分のヘディングシュート)を迎えましたが足に限界が来て途中交代するなど、攻撃面でパワーを残しておくことができなかった。
劣勢時こそ“マジメさのバランス”を考えてほしい。
ここで強調しておきたいのが、劣勢時の“マジメさのバランス”です。もちろん日本人選手の特性は献身的な動きであることは間違いありません。でもずっと守備に追い回されていると、相手のプレーに対応するだけ、受け身のプレーになってしまう。だからこそ、どこかのタイミングで相手の想定を外れるようなアクションを起こす勇気とアイデアを持つ必要があったと思います。
極端に数字で表すとするなら、2列目の選手は時間が経つごとに「守備100/攻撃0」の意識でプレーしていたのではないかな、と感じます。先制点は試合が始まってすぐだったこともあって、原口らがゴールへと一気に向かうことができました。それは“守備から攻撃へと素早く切り替えよう”という意識があったからこそで、ボールを奪う前での準備段階で攻撃のイメージを持っておけた。押し込まれた状況でも先ほどの数字で表すなら「守備90/攻撃10」にしておくだけで、もう少し相手を慌てさせるカウンターを仕掛けられるのでは? とは感じました。