プロ野球亭日乗BACK NUMBER
なぜラミレス監督は嶺井を使ったか。
DeNAと巨人の明暗は、捕手起用の差?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/10/11 16:30
一夜にしてスターになった嶺井博希。2014年に記録したプロ初安打は逆転サヨナラ三塁打であり、「持ってる」男なのかもしれない。
投手と配球の意図が共有できていなかった場面が。
シリーズ開幕前のミーティングで徹底したのが、シーズン中に合わせて19本塁打を浴びている2番・梶谷隆幸、3番のホセ・ロペス、4番・筒香と並ぶDeNAの主軸打者への対策だ。
ところが蓋を開けてみるとこの3人にシリーズ4本塁打を浴び、特に第1戦では3回に梶谷に同点弾を浴びると、1点リードの6回には最も警戒していた筒香に逆転2ランを浴びた。
ここが小林の責任が問われるところだった。
場面は6回2死一塁。カウントは3ボール1ストライク。小林本人が「歩かせてもいいと思った」場面で、マウンドのマイルズ・マイコラス投手は「自分は攻めるつもりだった」と全く逆のことを考えていた。配球への意図を共有できないままに、中途半端な外角へのチェンジアップを要求した。それが甘く入って痛打されている。
「徹底すべきところは徹底すべき場面。シーズン中と同じことになってしまった」
試合後に振り返ったのはヘッドコーチの村田真一だったが、シーズン中から指摘されていた配球の詰めの甘さ、投手とのコミュニケーション不足が勝負どころで出てしまったわけである。
短期決戦が捕手の戦いだとしたら……。
またシリーズでは合わせて3つの暴投があり、第2戦では2回の暴投から先取点を奪われているのも見逃せない。
これもまたシーズン中からの課題だった軽率なキャッチングと、ワンバウンドしたボールに対して体で前に落とすブロッキングの悪さが大事な場面で出たものだった。
正捕手として3試合にフルでマスクを被って臨んだシリーズ。9打数で安打はわずかに1本きりだったのは、ある意味指揮官も想定内だったかもしれない。ただ、打撃には目をつむっても、しっかり守って投手陣をリードしていってくれるという信頼感こそが、高橋監督が小林を使う根拠だったはずなのである。
短期決戦が捕手の戦いだとしたら、その捕手起用への根拠が最後に決まったのがDeNAだった。そしてその捕手で計算外があったのが巨人だった。
ならばこの結末も、また必然と言えるのかもしれない。