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なぜラミレス監督は嶺井を使ったか。
DeNAと巨人の明暗は、捕手起用の差?
posted2016/10/11 16:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
負ければ全てが終わるこの土壇場で、DeNAのアレックス・ラミレス監督は、なぜ第3捕手の嶺井博希を使ったのか?
クライマックスシリーズ、ファーストステージ第3戦。2位の巨人に0.5勝のアドバンテージがあり、3位進出のDeNAは勝つことでしかファイナル進出の道はない。そんな状況の中、3-3の同点で迎えた8回のDeNAの攻撃だった。
この回先頭の4番・筒香嘉智の内野安打から無死一、二塁のチャンスを作ったが、6番の倉本寿彦の投ゴロ併殺で2死二塁と状況は変わった。巨人のマウンドは左腕の山口鉄也。ここでラミレス監督は代打の1番手に後藤ゴメス武敏内野手を送ったが、巨人ベンチは当然塁を埋めるために歩かせて、一、二塁となった。残る右の代打には前日に先発出場した白崎浩之もいる。だが、ここで指揮官が指名したのが嶺井だった。
嶺井起用にいたる、練習での振りとリードの違い。
今季レギュラーシーズンでの出場はわずか11試合で、放った安打は5本。しかも2番手捕手に高城俊人がいるため3番手の嶺井は6月15日に一軍初昇格して7月14日にファーム落ちすると、シーズン終了間際の9月28日に再昇格するまで二軍暮らしが続いていた。
CSでシーズンとは違い捕手3人制となって、巡ってきた晴れ舞台である。
「試合前の練習からバットが振れていた」
ラミレス監督は言う。
「だから早い段階から、(代打で)使うので準備をしておくように伝えていた」
実際にお呼びがかかったのは終盤の8回だったが、もちろん準備は整っていた。そして、このとき指揮官が嶺井を指名したもう1つの理由は、この打席だけではなく、延長を想定した守備があったからだったという。
「高城は(先発した)戸柱と似たような配球になる。嶺井は2人とは全く違うリードをしてくれると思った」
これがこの土壇場で嶺井を使った最大の根拠だったのだ。