パラリンピックへの道BACK NUMBER
パラ五輪マラソン銀を呼び込んだ縁。
道下美里と支援者たちの幸せな関係。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/10/10 08:00
道下は7日に行なわれたオリンピック・パラリンピックのメダリスト合同パレードに参加。パラリンピック旗を振り、満面の笑みを浮かべた。
道下をサポートした人々は約100人にものぼった。
リオでは、堀内規生、青山由佳の両名がガイドランナーを務めた。
その2人にとどまらない。
「私が福岡に来て入った大濠公園ブラインドランナーズクラブは、健常者の方とブラインドランナーがともに走ることを楽しむためのクラブです。そこで出会った人たちが、人をつなげるのが上手な人たちばかりで、私がこういう目標で走りたい、と言うとそれに対して協力してくださる方が出てきて、『ここにいる伴走の方だと無理かもしれないから』と、ほかの人を紹介してくれたり、資金的に難しいとなると一緒に集めてくれたり」
いつしか、周囲の人は増えていった。
「1週間の練習で伴走してくださる方が9人いて、朝だったり夜だったり、時間の都合をつけて一緒に走ってもらっています。ロープを持つのは9人なのですが、その場所に送ってくださる方や給水のサポートをしてくださる方、100人くらいの方がかかわってくださっているんです」
それを「仲間が仲間を引き寄せて」と表現する。
仲間たちへの感謝の思いを胸に、笑顔で走る。
リオへ向けて、道下は常に「金メダル」を目標に掲げてきた。それは仲間の存在があったからこそだった。
「性格的に、言葉に出して自分にプレッシャーをかける方がいいというのと、言葉にすることで、周囲の方を巻き込んでいく意味がありました。1人では走れませんし、ともに目標意識を持てば仲間は一緒に動いてくれる。言葉は人を動かす力がありますから」
このように競技に取り組み、つかんだメダルだから、「原動力は仲間」と振り返る。
「私はもともと才能のある選手ではないと思います。ただのふつうのランナーだと思う。でも、『みっちゃんなら行ける、やれる』と信じてくれた仲間がいてこそです」
仲間の存在を何度も言葉にする。道下の姿に気づくと、コースを思い思いに走る人たちが「おめでとう!」「よかったね!」と声をかける。駆け寄る人も少なくない。皆、知り合いであるかのように話しかける。
道下はレースの間、笑顔で走ることでも知られている。サポートしてくれる人々への感謝の思いからだ。多くの人が周囲に集まってきたのは、道下の姿勢そのものではなかったか。そして、走ることへの思いではなかったか。