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憧れの地アマゾンを旅した、虫好き仏文学者の名紀行。~蝶集めの幸福感と業の深さ~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2016/10/18 08:00
『楽しき熱帯』奥本大三郎著 講談社学術文庫 880円+税
昆虫少年も50歳を過ぎた。ようやく憧れの地、アマゾンのジャングルを訪れた。日本からは青い銀紙を張り付けたボール紙を持ってきた。狙うのは銀紙の色と同じ色のメタリック・ブルーのモルフォチョウ。この蝶の雄は青く輝く色に寄ってくる。湿度百パーセントに近いジャングルの中で汗まみれで「口をあいたまま、首が痛くなるほど上を向いて銀紙で煽いでいると」森の奥から真っ直ぐに大きな青い蝶が飛んできた。仏文学者で、『ファーブル昆虫記』の完訳者で、昆虫少年OBの先生は、感動した。偉大な標本商ル・ムールトの発見した囮り採集は本当だった。先生はこの蝶の標本を博物館で初めて見たときの衝撃も思い出し、生きて飛ぶ蝶を観ている自分が信じられない。