プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーでベンチ続きのセスク。
“ピルロ役”としての定位置奪回を。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2016/09/24 08:00
セスクはバルサ時代、シャビ、イニエスタの牙城を破れずチェルシーへと新天地を求めた。在籍3年目の今季、司令塔に再び君臨できるか。
視野もパスのレンジも広いセスクの使い道は、ある!
実際の試合では、敵の果敢なプレッシングを前に突破口を見出せずにいたエデン・アザールとウィリアンの両翼が、前線アウトサイドでロングボールを待つ姿が見られた。しかし、エンゴロ・カンテの手前にネマニャ・マティッチという新旧正ボランチによる中盤深部から、正確なロングレンジのパスが届く気配はない。
その一角に、視野もパスのレンジも広いセスクがいれば話は別だ。後半途中からの投入ながらも今季初出場を果した第2節ワトフォード戦(2-1)でも、自陣深くでのインターセプトからいきなり相手CBコンビの間を狙ってパスを放ち、ジエゴ・コスタの決勝ゴールを演出している。
もっとも、そのセスク自身も現実を直視する必要がある。いわゆる“ピルロ役”の採用は当面あり得ないという現実だ。セスクはコンテの就任が決まった今年4月、『スカイスポーツ』のゲスト解説者として「正直、万能タイプのMFじゃないし、守備面で機動力があるとも言えないけど、ロングパスを交えて前線を操るのは好きなんだ」という自己評価を口にした。
あの時点からセスクは、コンテが率いたユベントス時代のアンドレア・ピルロのように、守備のハードワークは周囲に任せてパスを散らすことに専念する中盤最深部の策士としての役割に、新体制下で生き残る術を見出していた感がある。
プレミアのピッチには“ピルロ役”の居場所はない?
ところが新監督は、プレシーズン中に時間を割いた4-2-4といい「攻守のバランス重視」を理由に開幕後の基本としている4-1-4-1といい、中盤中央に“ピルロ役”を設けることのできるシステムを採用する素振りは見せていない。セスクの能力というよりも、セリエAよりもはるかに忙しいプレミアのピッチには、優雅に攻撃を組み立てる“ピルロ役”の居場所はないという判断によるものなのだろう。
セスクのベンチ降格には当人の責任もある。最終ライン手前の1枚としてはカンテを相手に勝ち目はない。だが、カンテの前方に位置する2列目中央でも、マティッチとオスカルに定位置を奪われているのだ。両者とも、コンテが「ラストパスやアシストは計算できるが守備面での貢献度が足りない」と注文をつけているセスクとは違う攻守両用タイプだ。マティッチは元攻撃的MF。オスカルはトップ下のイメージが強いが、「タックル好き」を自認するだけあって仕掛けるタイミングも良い。