岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
リオから'19年W杯、そして東京五輪。
岩渕GMが語る日本ラグビーの将来像。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byJMPA
posted2016/09/08 16:30
フランス相手に劇的な勝利を飾り、ベスト4進出を決めた男子セブンズ。この勢いを持続することがラグビー界にとっては重要だ。
男女とも世界一厳しいトレーニングに取り組んだ。
たしかに男女代表は、共に世界一厳しいトレーニングを行ってきました。これは誇張ではありません。
たとえば昨年のラグビーワールドカップの際には、男子15人制代表がいかに過酷な練習を重ねてきたかが大きく注目されました。
しかし走り込みの練習一つをとっても、男女の7人制がリオ五輪に向けて実際に走り込んだ距離や時間、行った走り込みの強度(激しさ)といったものは、昨年のラグビーワールドカップに参加したチームをもはるかに上回るのです。
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またリオ五輪で7人制のラグビーが正式種目に採用されることが決まった瞬間から、私たちはメダルを狙いにいくと公言し、自分たちに絶えずプレッシャーをかけ続けてきました。
私自身、代表のGMになってからは「リオで必ずメダルを取る」という決意を誰よりも強く持って強化に臨んできました。
「メダルを取らないと日本に帰れない」と思えたか。
しかし今、冷静に振り返ってみると、自分の心構えはまだまだ甘かったと感じています。具体的に言うなら「リオで必ずメダルを取る」という意識を持っていても、「メダルを取らないと日本に帰れない」というレベルまでは、マインドセットを高めきれていなかったような気がします。
世界と戦う上で、マインドセットがいかに重要か。わかりやすいのは、柔道の日本代表の例でしょう。
井上康生監督率いる柔道男子日本代表は、全階級でメダルを取るという偉業を成し遂げました。それは「日本の伝統を守るために、自分たちは絶対に結果を出さなければならない」「メダルなしでは日本に帰れない」というレベルにまで覚悟が定まっていたからに他なりません。
日本が世界で結果を出していくためには、練習の量と質、方法論、コーチングスタッフ、練習環境、すべてにおいて世界一になるだけでなく、マインドセットの点でも、世界一になる必要があります。しかし私たちは、マインドのセットの部分で世界一になりきれていませんでした。これこそがメダルを獲得できなかった最大の要因なのです。