錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
銅メダルの次は全米オープン優勝だ!
錦織圭が今年最も勝負をかける大会へ。
posted2016/08/29 07:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
JMPA
トロント、リオ、シンシナティと、錦織圭はこの夏、全米オープンの前に予定していたハードコートの大会を戦いきった。
この3つのイベントに全て出場したのはトップ10では錦織だけだ。
結果は、準優勝、銅メダル、3回戦敗退――単純にこの1カ月をATPランキングに反映されるポイントだけで見ると、690ポイントになる。
あらためて記すが、今回のオリンピックにポイントはつかなかった。
それでもなお690ポイントという収穫は、トロントで優勝したノバク・ジョコビッチ、シンシナティで初のマスターズシリーズの栄冠を手にしたマリン・チリッチに次ぐものだった。
そして、その2人になくて錦織にあるものが、リオから持ち帰ったメダルである。錦織の言葉を借りればツアーとは「別物」の、1ポイントにもならない6つの戦いがもたらしたメダルの重さは、錦織本人も首にかけて初めて気付いたものだったのだろう。
錦織が実感した、国を背負って戦う誇り。
「今までにない感情が芽生えた」
ブログにはそう綴られていたが、日本にいいニュースを届けたいとか、国を背負って戦う誇りとか、プレッシャーが大きい分成長できるとか、これまでも何度か口にしたことがある言葉を、心底実感できたという喜びと驚きが伝わる。
苛酷なスケジュールの中、確かに迷いがあったはずのオリンピックを、そんなふうに意味あるものにしてみせ、しかもかたちに残した錦織はさすがだった。
「日本テニスに96年ぶりのメダルを」と期待される重圧を、見事に自分を奮い立たせる力に変え、時に涙を両手で覆い、時に拳を突き上げながらもぎ取ったメダルは、メディアが煽った金メダルには届かなかったが、それは明らかな〈勝利〉の証だった。