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甲子園ファンの声援に潜む「残酷さ」。
八戸学院光星は、何と戦ったのか。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2016/08/23 11:00

甲子園ファンの声援に潜む「残酷さ」。八戸学院光星は、何と戦ったのか。<Number Web> photograph by Kyodo News

今大会最大の逆転劇の犠牲者となった八戸学院光星ナイン。彼らの目に、スタンドはどう映ったのだろうか。

群集心理が暴走するのは「悪ノリ」では。

 ネット裏で観戦していた1人の愛知出身のファンは言った。

「最初の方なんて、点入っても喜んでの俺らだけだったからね」

 次の試合を目当てに訪れていたファンが、単に逆転劇が見たいという軽い気持ちで便乗しただけではなかったか。

 ある関係者は「悪ノリ」だと批判した。よく「甲子園のファンは暖かい」と言われる。しかし、それが群集心理となって暴走し始めると、一種の狂気になりうる。この日ほど、ファンの声援が残酷に思えたことはなかった。

 後日、明徳義塾の馬淵史郎監督はこう感想を語った。

「テレビで見とったよ。打たれた球は、みんな真ん中。なんでかね、ああなると魅入られたように真ん中に放ってしまう」

甲子園は、日本でもっとも「感情的なスタジアム」。

 今大会、東邦-八戸学院光星戦に近い雰囲気になりかけたことが何度もあった。まるで、ファンが自分たちの声援で結果を変えられることを知り、その快楽に味をしめてしまったかのように。

 しかし、ファンが期待したような展開にはならず、いずれも一時的な現象に終わった。そのことに思わず胸をなで下ろしてもいた。

 どこのチームを、どれだけの熱量で応援しようと、それはファンの自由だ。観客が逆転劇を演出するのも、日本でもっとも「感情的なスタジアム」、甲子園の魅力の一つだ。

 ただ、応援をするとき、ほんの少しだけ相手チームの心情に思いを巡らせてもいいのはないかと思えた。

 絶大なる味方。それは反対側から見れば、強大な敵にもなりうる。

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