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甲子園初勝利のいなべ総合。
「野球ノート」で磨いた力とは?
posted2016/08/23 11:20
text by
安田未由Myu Yasuda
photograph by
Kokoyakyu.com
高校球児たちが取り組む「野球ノート」の存在を知っているだろうか。
決まった形はない。個人で取り組んでいるものがいれば、チームとして取り組む高校もある。チームで取り組んだ場合、その方法もまた多岐にわたる。監督に提出し言葉のやり取りをするチーム、選手同士でグループを作りコメントしあうチーム、一冊のノートを順番に書いていくチーム……。
書く内容もさまざまで、チームや個人の目標、日々の練習メニューや出来事、そこから学んだこと、感情的な思いや技術的なメモなど、それぞれが趣向を凝らしたものとなっている。
ただ、ひとつだけ同じものがある。
それは、少しでもうまくなりたい、勝ちたい、甲子園に行きたい……という球児とそこに寄り添う指導者の「思い」だ。
野球ノートを見ると、高校野球の魅力が分かる。
こうした「思い」を追いかけた『野球ノートに書いた甲子園』という本がある。2013年以来、毎年刊行され、今年第4弾を迎えたこのシリーズが取り上げた高校は30チーム以上にのぼる。直筆で書かれた、球児、指導者の文字からは、高校野球の魅力と、球児たちの普段見ることができない努力の跡がうかがえる。
今年の夏の甲子園で初めて勝利を挙げた、いなべ総合学園高校(三重)は、技術、精神の両面で「野球ノート」が大きな役割を果たしている。背番号1を背負い甲子園で3試合に登板した山内智貴の野球ノートには、投球フォームを記した連続イラストがある。
「大谷翔平投手の投球フォームなど、動画を少しずつ止めながら書いています。書くことでイメージがつかめて低目への制球が良くなりました。腕の回旋もコンパクトになっていった」(山内)