リオ五輪PRESSBACK NUMBER
「主将として後悔はない」が……。
遠藤航、1次L敗退に噛み締めた現実。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJMPA
posted2016/08/15 14:20
五輪代表チームのキャプテンの遠藤と、OA枠ながら全試合出場を果たした興梠。帰国後は、チームメイトとして、浦和で五輪の経験を生かすことになる。
それぞれの本音をぶつけ合うチャンスだったはず。
もちろん遠藤は一個人として、味方のリカバリーに回った。ナイジェリア戦のミスで失点に絡み、落ち込んだ室屋成にはこう言い聞かせた。
「俺もACLでミスして失点した。大事なのは、ミスした後のファーストプレーだ。その次にしっかりとボールを受けて前に持ち運んで裏に出したり、ひとつ自分でいいプレーができればその後ノッていけるようになる。試合が終われば反省するけど、試合中は切り替えるしかない」
室屋は、こうした言葉に救われ、コロンビア戦ではフッ切れたプレーを見せた。
しかし、コロンビア戦の前は、選手が初戦を終えて何を考えているのか。前の選手は守備の選手についてどう思っていたのか。守備の選手はどういう守備を望んでいるのか。それぞれの本音をぶつけあう最後のチャンスだったはずだ。
選手だけのミーティングは、監督が話をするミーティングとは異なり、単なる会合でもない。タイミングと場所さえ間違えなければ驚くほどの効果を発揮する。2005年、ドイツW杯最終予選の「アブダビの夜」は有名な話だ。コロンビア戦に勝てば自力での決勝トーナメント進出が可能になる。そのためには前線と後方の選手が一体となって戦うべきであり、彼らが一堂に会して決起集会的な選手だけのミーティングがあってもよかったはずだ。
個人の思いの強さが結果につながらないジレンマ。
しかし、夜は静かに更けていった。
コロンビア戦、前半は守備陣が頑張っていたが、攻撃陣が決定的チャンスを逃した。後半は守備陣が2失点すると、攻撃陣はようやく目が覚めたように2ゴールを上げて追い上げた。しかし、相手を突き放すところまでにはいかない。どこか攻守にチグハグ感が否めず、最終予選の時のような一体感が試合運びから感じられなかった。
ただ、遠藤個人のプレーからは気迫を感じた。ミスもあったが試合を挽回しようという気持ちが見えた。しかし個人の思いの強さが結果に繋がらない。それが最終予選の時との最大の違いなのかもしれない。
「勝てる試合だったですけど、勝ちきれない。この引き分けは痛いですね」
遠藤の表情は少し硬張り、余裕が失われていた。これで1分1敗、最終戦に希望を繋いだが自力で決勝トーナメント進出の可能性を掴めなかった現実が、そのまま遠藤の表情に表れていた。