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カメラが止まってからが本領発揮。
甲子園監督の、子供みたいな名言集。

posted2016/08/16 14:00

 
カメラが止まってからが本領発揮。甲子園監督の、子供みたいな名言集。<Number Web> photograph by Kyodo News

明徳義塾の馬淵史郎監督は、様々な伝説を持っている。今大会でも、新たな逸話が生まれている。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 監督のコメントは、テレビカメラがなくなってからがおもしろい。「気取り」がなくなり、人間味溢れるホンネがこぼれる。

 記者の人気ナンバー1は、断トツで明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督だ。もはや「馬淵節」として、甲子園名物となっている観さえある。試合前、「先発投手はご飯を炊くのと一緒で、じわじわいかんと」との名言を吐き、報道陣をうならせた。記者から質問が途絶えると黙ってしまう監督が多い中、サービス精神旺盛な馬淵は、沈黙の空気が流れると自ら語り始める。だからだろう、試合後、いつまでたっても大勢の記者に囲まれている。

 13日の第2試合、明徳義塾の初陣は鳥取代表の境高校が相手だった。7-2で快勝したが、3回表に9番打者(右打者)に先発の金津知奏がレフトポール際に放り込まれた同点2ランが気に食わない。

「あれは予想してなかったわぁ……。肩口からのカーブは気ぃつけろよって言ったあとのボールよ。ぱかーんって」

 ベンチから捕手の古賀優大に身振り手振りで注意した直後の失投だったのだ。浜風の影響で、レフトポール際に上がった打球は、想像以上に伸びる。

「後から金津に聞いたら、『外をねらったのがすっぽ抜けました』って。ほんとか嘘かわからんけど」

 ざっくばらんな物言いに、その場が笑いに包まれる。

現在60歳の監督が「還暦を迎えてから」変えた考え。

 次戦は16日の第1試合、嘉手納との対戦だった。過去甲子園で沖縄勢と3回戦い、いずれも負けていた馬淵は、その理由をこう語る。

「指笛が気になって仕方ないんよ」

 沖縄勢が登場すると、在阪の沖縄人が応援にくるせいで、球場内は指笛の大合唱となる。

「三塁側ベンチのときは、一塁側から浜風で指笛の音が運ばれてくるやろ。対面(といめん)やから、すごい気になる」

“亜熱帯化”が進む近年は、「1人のピッチャーじゃ勝てんと思うようになった」と語る。具体的にいつからそう考えるようになったかを問われると、こんな珍回答も。

「還暦を迎えてからかな」

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