プレミアリーグの時間BACK NUMBER
トッテナムの優勝オッズ9倍は狙い目?
スタメンは既に最強、あとは選手層。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/07/31 08:00
現在世界で最も熱い視線を集める若手の1人である、デル・アリ。ビッグクラブも狙っているが、トッテナムは当然出す気はないようだ。
主力が残留し、むしろ伸びしろが大きい。
一方、マウリシオ・ポチェッティーノ体制3年目のトッテナムは、昨季が最高のチャンスだったと見られているようだ。ここ数年プレミアでは度々、アーセナルが「優勝の絶好機を逃した」と言われてきたが、トッテナムは過去20年間アーセナルよりも上の順位でシーズンを終えたことがない。最後まで優勝を争った昨季以上の成績を残すのが難しいと言われても、仕方のない部分はある。昨季のトッテナムと同じく、3シーズン前に優勝に肉薄する躍進を見せたリバプールが、翌シーズンは6位に終わったという近年の前例もある。
だが、当時のリバプールは前シーズンのリーグ得点王ルイス・スアレスを失っていた。その点今季のトッテナムは、昨季得点王で2年連続リーグ戦20得点台のハリー・ケインをはじめ、主力が残っている。
しかも23歳のケインを含めて、まだ伸びしろもある若手が多い。若さ故の弱点でもあるチームの精神面に関しては、優勝を逃した昨季に教訓を得てもいる。チェルシーに2点差を追いつかれてレスターの優勝が決まった昨季36節、トッテナムは9名が警告を受けた。デル・アリに至っては、その前節での報復行為に対する処分でチェルシー戦のピッチに立つことすらできなかった。手痛いレッスンを受けているのだ。
自慢の攻撃力に加え、守備もリーグ屈指に。
レギュラー陣の能力自体は、昨季の時点でリーグ最高とも言えるレベルにあった。ポチェッティーノ体制で重点が置かれる攻撃面では、得点数こそマンCに次ぐリーグ2位だったが、計500回を越えたチャンス創出数も、1試合平均で17本を越えたシュート数もリーグ1位。やはり20チーム中の最高値を記録した平均6.6本の枠内シュート数は、実際にチャンスらしいチャンスが作られていた事実を示す数字でもある。
また、守備面が軽視されがちなポチェッティーノ体制像は一昨季までの話。昨季のトッテナムは、ルイス・ファンハール前監督が堅守を強いたマンUと並ぶリーグ最少失点でシーズンを乗り切っている。
守護神ユーゴ・ロリス頼みのイメージも過去のもの。枠内に打たれた昨季の被シュート数122本もリーグ最少となっている。CBのトビー・アルデルバイレルトが狙い通りの即戦力となった4バックには、昨季プレミア最強との声も多かった。
となれば、今夏の移籍市場での動きが目立たなくても問題視することはない。
主力入替えが濃厚な優勝候補トップ3とは違い、トッテナムに必要な補強は、選手層の充実だけなのだから。