松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
「不調=マイナス思考」は本当か?
松山英樹に参考にしてほしい46歳。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2016/07/19 11:20
5月のプレーヤーズ選手権7位を最後に、予選落ちが続き苦しんでいる松山英樹。今はまだ、問題の所在を探す段階だ。
次に予選を通るまでは「マイナスに考えても仕方ない」。
メモリアル・トーナメントでも全米オープンでも予選落ちを喫し、予選落ちのないブリヂストン招待では下位、そして全英オープンではまたしても予選落ち。
「何かを変えなきゃうまくいかない。何をしなきゃいけないかを考えていきたい」
そう、何かを変えなければいけないだろう。しかし現在の松山の不調は、振り返れば、何かを変えたことから始まったのだと思う。
マスターズ後のオフを経て米ツアーに復帰してからというもの、新しいアイアンを実戦で使い始め、ピン型のエースパターをマレット型に持ち替え、さらには新しいドライバーも使い始めた。
そうしたギアチェンジそのものが不調につながったかどうかは、松山自身にも「わからない」。アイアンとドライバーはニューモデルへシフトするための試用だったのに対し、パターはたまには異なるものを使ってみようという気分転換が目的だった。何にせよ、2カ月ほどの短期間のうちにドライバーもアイアンもパターも次々に変え、ときに元へ戻したりもしたことで、変化は一層、複雑化していった。
「いろんなことが考えられます。これだけうまくいかないと、精神的にもどんどん悪いことを考えてしまうもの。次に予選を通れば、そういう気持ちも変わってくると思うけど、それまでは、マイナスに考えても仕方ない」
そう言って松山は一層、下向き加減になった。
全英の優勝争いをした2人は、苦労の権化。
これだけ大叩きや予選落ちが続けば、そりゃあ自信も失うだろうし、そりゃあマイナス思考にもなるだろうと頷ける。どうしようもなく歯がゆく、もどかしく、辛いだろうとも思う。
だが、「マイナスに考えても仕方ない」ことはないのではないか。そう思うのだ。
今回のロイヤルトゥルーンで死闘を演じたヘンリック・ステンソンとフィル・ミケルソンは、どちらも「うまくいかないこと」を次々に経験してきた苦境や苦労の権化のような存在だ。
ステンソンは深刻なスランプを2度も経験。上っては滑り落ちることを繰り返し、メジャー大会で惜敗をどれほど繰り返してきたことか。そして惜敗を喫した回数と、そのこっぴどい敗北ぶりにおいては、ミケルソンがステンソンのさらに上を行く。
「うまくいかないこと」はゴルフのみならず、私生活上でも多々あった。ステンソンもミケルソンも投資がらみで途方に暮れるほどの大金を失った。思わず取った言動が激しい批判の対象にされたこともあった。
だが、それでも諦めず、プラス思考で前進してきたからこそ、彼らはトゥルーンであの素晴らしい接戦を演じることができたのだろう。