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中上貴晶のGP初優勝は嬉しいが……。
日本の若手ライダーは育っているか?

posted2016/07/15 17:00

 
中上貴晶のGP初優勝は嬉しいが……。日本の若手ライダーは育っているか?<Number Web> photograph by Satoshi Endo

中上の初優勝は、日本人ライダーとしては2010年の高橋裕紀以来の偉業となる。

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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Satoshi Endo

 ロードレース世界選手権のMoto2クラスに参戦する中上貴晶が、6月下旬、アッセンで開催された第8戦オランダGPで念願の初優勝を達成した。今季、調子を上げてきた中上は、第6戦イタリアGPで2年ぶりのフロントローとなる予選2番手を獲得。第7戦カタルーニャGPで今季初表彰台獲得となる3位。その勢いで挑んだ第8戦オランダGPで初めてグランプリの頂点に立った。

 勝因は、フリー走行と予選で万全の状態を築いたことだ。

 予選は断続的に雨が降った不安定な天候のせいで6番手グリッドだったが、安定したタイムで連続周回をこなし、決勝に向けて自信を深めていた。

 その自信が、中上のウィークポイントを見事に払拭することになる。

 これまでは、序盤の混戦の中で決まってポジションを落とし、それがレース結果に悪影響を及ぼしていた。今回も絶好のスタートというアドバンテージを生かせず、オープニングラップは結局5番手。いつもならさらにポジションを落としていくのだが、今大会はそれ以上遅れることはなかった。

 ライバルに対してスピードと安定性に優っていた中上は、着実にポジションを上げ、レース中盤にトップに立つとそのまま首位でチェッカーを受けた。

 今年は基本のセッティングがキッチリ決まり、どのサーキットでも大きく変えることはなかったという。アジャスト程度のセッティングで決勝に挑める状態が出来上がったことが、ライディングにも好影響を与えたということか。

3年前、中上はすぐMotoGPへ行くはずのホープだった。

 Moto2クラスは、全チームが同じエンジンと同じタイヤで戦われる。異なるのは車体とサスペンションだけというクラスでは、自ずとやれることは限られてくる。

 結果的に、どれだけバランスの良い車体を作り、いかにエンジンとタイヤのパフォーマンスをライダーが引き出せるかという戦いになるのだが、中上にとって、やっとストライクゾーンが見えてきたことになる。

 3年前、中上は、将来のMotoGPライダーとしてMoto2クラス大きな注目を集めていた。この年、ランキングは8位だったが、3回のPPを含む9回のフロントローを獲得し、5回の表彰台を獲得した。そのうち4戦連続2位というもっとも乗れている時期があって、このころは、もっぱら先行逃げ切りというスタイルに徹していた。得意とするスタートから序盤に後続を引き離す――しかし中盤以降、そのペースをキープ出来ず、後続に追い上げられる。そのため、あと一歩というところでいつも優勝を逃してきたのだ。

【次ページ】 初優勝から年間王者、そしてMotoGPへ……。

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