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中上貴晶のGP初優勝は嬉しいが……。
日本の若手ライダーは育っているか?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2016/07/15 17:00
中上の初優勝は、日本人ライダーとしては2010年の高橋裕紀以来の偉業となる。
初優勝から年間王者、そしてMotoGPへ……。
Moto2クラスにタイヤを供給するのはダンロップタイヤ1社で、このころは、タイヤの選択が難しかった。ハードを選ぶと前半戦にペースを上げられない。その代わり、後半になってもタイヤがたれず、ペースをキープすることが出来る。対照的にソフトを選択すると、前半はいいのだが、後半が苦しくなるという時代だった。
どちらのタイヤを選択するかがレース結果に大きく影響したのだが、中上はどちらかといえばソフト側を選ぶことが多く、グリップ重視のタイヤ選択だった。そのウィークポイントを克服するトライがこの数年の不振の原因のひとつでもあったのだが、あれから数年過ぎ、最近のダンロップタイヤはグリップも耐久性も両方改善されてタイヤ選択に迷うことが少なくなったようだ。
いずれにしても、初優勝を達成したことで、中上への注目度は、再び大きくなった。これを受けて中上は、最高峰クラスであるMotoGPへの参戦に向け、こう語ってくれた。
「これまではチャンスがあればMotoGPクラスに上がりたいと思っていた。いまもその気持ちに変わりはないが、初優勝を達成したことで、Moto2でチャンピオンを獲って上がりたいと思うようになった。MotoGPでもしっかり優勝を狙える体制とチームで挑みたい」
前回のコラムでは、カタルーニャGPで今季初表彰台に立った中上のことを書いた。「表彰台に立ち続けることで何かが変わることを期待したい。そして、最高の形でMoto2クラスを卒業してもらいたい」としたが、2戦連続表彰台と初優勝を達成したことで、早くも変化が生まれてきたことを感じさせた。
8耐のテストで世界レベルの実力を見せつけた中上。
初優勝を達成した中上は、その後、鈴鹿サーキットで行われた鈴鹿8時間耐久レースの公式テストに「HONDA TEAM ASIA」の一員として参加した。
アジアロードレース選手権に参戦するアジアの選手を中心にしたラインナップで、将来はグランプリ参戦を目指すライダーたちばかりである。中上もホンダチーム全体の補欠のひとりとして参加したのだが、5年ぶりの鈴鹿で、ほとんど初めて乗る世界耐久用のホンダCBR1000RRで好タイムをマークし、周囲を驚かせることになった。