濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ムエタイ王者がKOでK-1連覇!
老獪さ封印したゲーオのリアリズム。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2016/07/03 07:00
見事に連覇を果たしたゲーオ。大会前からの連覇予告通り、全試合ほぼ完璧な試合運びで公約を守った。
“日本仕様”への適応をみせたゲーオの凄さ。
タイ人選手は、総じて“読めない”ところがある。
相手を叩き潰すような攻撃的ファイトをしたかと思えば、テクニックでいなすような試合で観客の盛り上がりごと封じ込めてしまう場合も。今回のゲーオは前者だったということだ。
ムエタイの選手は、夢やロマン以上に生活をかけて闘っている。リアリズムの度合いが他国の選手とは違う、といってもいいはずだ。だからテクニックだけで勝てるのであればそうするし、倒して勝つことを求められればやってみせるということなのだろう。対戦相手からすればじつに厄介な、いわば“煮ても焼いても食えない”個性を攻略することが、タイ人に勝つということでもある。
絶対的な外国人王者がK-1をメジャーにする。
この優勝で、ゲーオは完全な復権を果たしたと言っていい。
「本気になったゲーオはやっぱり強い」
誰もがそう感じたはずだ。
今大会はインターネットのAbemaTVで無料中継されたから、今まで以上にその名前と強さが知れ渡ったことだろう。
日本人が優勝を逃したことも、決して大きな問題ではない。
「メジャーって、突き詰めると外国人のことですからね」
かつてそう言ったのはDEEPの佐伯繁代表だ。旧K-1でいうならアンディ・フグやピーター・アーツ。PRIDEのエメリヤーエンコ・ヒョードルやヴァンダレイ・シウバ。外国人が活躍し、人気を博すことで大会そのものにもスケール感が出る。ゲーオという外国人チャンピオンを擁していることは、新生K-1がさらにメジャーになるための大きな強みなのだ。