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幼年の錦織圭が書いた「ラッキー論」。
運も味方にウィンブルドン2回戦突破。 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byAFLO

posted2016/07/01 11:20

幼年の錦織圭が書いた「ラッキー論」。運も味方にウィンブルドン2回戦突破。<Number Web> photograph by AFLO

芝コートでは、サーブはもちろんストロークの急速もクレーとは桁が違う。錦織の判断スピードが活きる場面でもある。

ストロークの調子が悪く、苦しい立ち上がり。

 順延に伴ってコートも変わり、ジュリアン・ベネトーとの2回戦はセンターコートを舞台に行われた。

 立ち上がりは相手のペースだった。フラット(直球)系のグラウンドストロークで上から叩こうとするベネトー。錦織のショットは、ちょうど打ちごろの高さに弾み、これをベースライン深く打ち込んできた。押され気味の錦織にはアンフォーストエラーが目立っていた。

 第1セットを落とした錦織は「グラウンドストロークでかなり押されていたので、どうにかしないとと思っていた」という。

 この2日間、実戦に近いラリーの練習はしていないはずだ。当然ながらショットは不安定で、スイートスポットを外すことも多かった。見た限りでは、ショット自体の調子が悪そうだった。

「スピンの量を増やし」、相手のリズムを崩す変化。

 しかし、錦織はここから立て直すのだ。

 その戦術の一端を会見で明かした。相手のフラットの深いボールを防ぐために高い打点で打たせようと、「スピンの量を増やした」。また、「一定のリズムで打たせるとストロークはうまい」と見て取り、ショットのリズムに変化をつけた。

 劣勢の中でも、冷静に戦術を選択できるのが彼の長所だ。錦織が徐々に流れを引き寄せる。ベネトーの勢いは第1セットをピークに徐々に衰え、その下降線と交差するように、錦織の調子は第2セット半ばから上昇カーブを描いた。

 第2セット3-3で初めて相手のサービスゲームをブレーク。以降は危なげない戦いを見せ、結局3セットを連取した。

 試合後の会見で錦織は「中2日空いてくれた。(脇腹痛が)治ってないのは事実なので、雨で助かった」と話した。

 全仏では雨に泣かされたが、今回は恵みの雨となった。

「雨降ってくれと、こんなに頼んだことは初めてくらい」

 切実な願いを、天が聞いてくれた。1日余分に休めたことで、コンディションは「1試合目よりはるかによかった」という。

【次ページ】 幼い頃に錦織が自分を励ますために書いた言葉。

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