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本田圭佑がホルンの監督解任を語る。
「今回は結果出せたバージョン(笑)」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/06/12 11:30
本田圭佑のサッカー選手と経営者と教育者というマルチタスクは、今も深化している。
「今の俺らのクラブにモウリーニョは必要ない」
この夜に行われた代表戦の話ではない。それでも本田は、すぐに頭を切り替えている。代表ジャージを着ていたが、その瞬間は紛れも無くサッカークラブの経営者の表情をしていた。
「人のマネジメントの部分。やっぱり育てないと。ダメだったら選手取っ替えてみたいなクラブを目指しているわけやないから。出ていない選手たちに、なんで出ていないのか、じゃあ出るために何が必要なのか。そういうコミュニケーションをしっかり取れる監督が必要だった。俺らに必要なのは、しっかりと選手のケアができて、選手たちの良い所を見てあげて、悪い所を直していく。そういう基本的なことを、ちゃんと情熱的に、ずっと選手たちを見ることができる監督が欲しかった。これが本質だと思う。だから、別に今の俺らのクラブにモウリーニョは必要ない」
唐突な人事に見られた監督交代は、人選も含めて切羽詰まった状態で下した経営判断だった。トップチームの指導だけに留まらず、若手育成を経験し、通訳を務められるほどの語学力を持つ濱吉氏に白羽の矢が立ったのは、本田が求める「選手に、チームに寄り添う」指導が可能だという見立てがあったから。
「今回は結果出せたバージョンやったということで」
そして勝負の決断は、奏功する。2部昇格、そして優勝。ホルンは誰もが認めるしかない最高の結果を残したのだった。
「大きな一歩ですよね。やはり結果が大事なので。まあ自分は結果出すと意気込んで、結果出せないときもある中で、今回は結果出せたバージョンやったということで(笑)。
いまは日本人の選手もいて、その上で我々のネットワークで信頼のおける人があの時点で濱吉さんだった。もうね、若手のモチベーションがね、これまでと全然違うよ。そこは取材してもらったらわかると思うけど。チームは大きく変わった。また、いろいろクラブの人間や選手に話を聞いて欲しい」
有言実行。本田の挑戦の人生で、常に問われるテーマだ。ブラジルW杯の失敗に見るように、実現できなかったこともある。今では彼も自虐的に語るが、挑むことが当たり前の本田にとっては、もはやそれも含めて自分の生き方である。
「1年で2部昇格」。この発言を、今回は実行してみせた。もちろん、何より現場で汗を流した選手やクラブスタッフの勝利でもある。ただクラブに訪れた重要局面で、離れたミラノから経営者・本田が下した決断は、吉と出た。
冷徹に思われた解任の裏側に存在した、本田のクラブに向けた熱。間違いなく、ホルンを2部へと突き進める力になった。