欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
本田圭佑がホルンの監督解任を語る。
「今回は結果出せたバージョン(笑)」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/06/12 11:30
本田圭佑のサッカー選手と経営者と教育者というマルチタスクは、今も深化している。
ホルンはこれまで、集いの場だった。
それを聞いた中には、嘲笑する者もいたという。
「そんな恥ずかしい目標を公言しないで欲しい」
これまでクラブの100年弱の歴史の中で、1部昇格経験はない。試合の勝ち負けも大事だが、人々の集いの場となるコミュニティとしての存在意義のほうが大きかった。それを、上昇志向を持った勝負するクラブへと変革していこうとする本田たち。あらゆるところで、ハレーションが起こるのはおかしくなかった。
その最たる出来事が、今年4月上旬に起こった。
首位争いを演じていた最中、オーストリア人監督のクレア氏が解任されたのだ。直近の試合で4点を奪う大勝を挙げていたにも関わらず、クラブは大鉈を振るったのである。
代わりに新監督に就任したのが、濱吉正則氏。スロベニアでUEFA公認のプロコーチライセンスを取得し、これまでさまざまなクラブでコーチ歴を重ねてきた。名古屋グランパスのコーチやスカウトを務めていた際に、プロ入りした本田と出会っていた。
ホルンとは、縁もゆかりもない人物。地方クラブを支えてきた地元の人たちには、不可解な人事と受け止められた。オーストリアメディアも「無謀」や「独裁」といった言葉を並べ立て、本田サイドを批判した。
予想通りの逆風でも、譲れない理由があった。
矢面に立たされた、ホルン経営陣。実は本田サイドの人間の中にも、日本人指揮官の就任に強く反対した者もいた。予想された逆風が案の定吹き付ける中、それでも本田は監督解任と濱吉氏の指揮官就任に踏み切った。
「昇格して優勝することで、周囲の声を鎮めたい」
本田からは当初そうとしか語られなかったが、彼にはどうしても譲れない理由があった。