セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
1990年代のセリエはヴィンテージだ。
イタリア発の“懐古趣味”が日本にも?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2016/06/02 10:40
どれもこれも懐かしいユニフォームばかり。あなたはいくつわかりますか?
選手達にとっても、1990年代のセリエは特別だった。
喜色満面の参加者の大半は、'90年代に青春時代を過ごしたアラサー・アラフォー世代だ。彼らは、自分たちが熱狂した時代のサッカーを追体験する機会に飢えているのだ。
イベントの発足人で主催者のアンドレア・ビーニは、ミラノで働く普通の若者だ。
一昨年の暮れ、フェイスブック上に「オペラツィオーネ・ノスタルジア」のアカウントを立ち上げたら、1週間で1万人が賛同してきて仰天した。現在のユーザー数は、33万7000人を超える。
会場で捕まえたアンドレアは、取材に気さくに応じてくれた。イベントの成功と同好の士が作り上げる熱量を彼はあらためて感じ取っていた。
「これだけ多くの人間がイベントの趣旨に賛同して、足を運んでくれたことに、このノスタルジック・イベントの意義があると思う。選手会にかけ合ってみたら、当時の選手たちも共感してくれてね。彼らにとっても'90年代のセリエAは特別なものだった、とわかったことが収穫だよ」
Jリーグ黎明期の熱狂を、つい思い出した。
過去の黄金時代を懐かしむ現象は、かつて栄華を極めたイタリア特有の現象なのだろうか。
雲一つない陽気の中で、会場の熱気に当てられるうちに、思い出したことがある。
1990年代のJリーグ黎明期の熱狂だ。
2016年現在の目で見れば、当時の日本サッカー界はあらゆる点で整備が遅れ、ブラッシュアップ不足の稚拙な時代だったかもしれない。
ただ、何もかもが未成熟で粗削りの時代だったからこその熱狂も確かに存在したわけで、例えば「Coca Cola」の筆記体ロゴが入ったヴェルディの緑色ユニや、「ANA SATO」のフリューゲルス・ユニを、騒々しいチアホーンの記憶とともにタンスの奥へ大事にしまいこんでいる日本のアラサー・アラフォー世代は、今なお日本中に結構いるのではないか。
サッカーに多様なプレースタイルがあるように、過去を愛でる“ノスタルジーという遊び”が、サッカーの楽しみ方の一つにあってもいいはずだ。