サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
個人のアピール欲がチームを殺す。
バラバラのU-23代表に苦言を呈す。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2016/05/27 11:30
今大会の唯一の収穫とも言える富樫敬真。FWの枠はOAも含めて当確組がほとんどいない激戦区だが、最後の18人に入り込めるか。
個人のアピール欲が冷静さを失わせる。
個人の判断ミスや集中力の欠如、あるいはチームが未熟だからと片付けるのは簡単だが、決定的なミスが起こる背景には、この大会が各選手にとって五輪へのサバイバルを懸けた競争の舞台であるということが大きい。
いいプレーを見せようと思い、その気持ちが強くなり過ぎてしまえば、冷静さはおのずと失われる。とくに国際大会の経験がない選手は緊張感も手伝って余裕がなくなり、周囲が見えなくなってしまう。すると普段起こさないような簡単なミスが起こるのだ。
守備陣でそれが起これば、そのミスは簡単に失点につながる。負の連鎖は、パラグアイ戦でもギニア戦でも顔を出した。
攻撃陣の意識が前掛かりになる弊害。
これが攻撃陣になるとどうなるか。ギニア戦の前半、決定機を何度も作りながら追加点を決めきれなかったのは、技術的な問題もあるが、意識が前掛かりになって「決めたい」気持ちが先走り、余裕を失ってミスシュートが続いたことも大きい。
ポルトガル戦で野津田岳人が決定的チャンスを2度にわたって外したシーンも、ギニア戦で富樫がフリーでヘディングを外したり、DFからボールを奪った後、GKと1対1になったにもかかわらず味方にパスしてシュートを打たなかったシーンもだ。
ギニア戦では、先制点を奪った後にまとまりを欠き、相手に襲いかかる怒涛の攻撃ができなかった。リオ五輪最終予選とは違って、今回はチーム全体の目的が「勝利」だけではない。各個人の考えや目的がバラバラで、ここぞという時にまとまることができなかった。
「イングランドが7-1で勝った相手に自分たちは2-1でしか勝てない。チーム力の差を感じざるをえないですね」
前田は、そう言って自分たちの力のなさを嘆いた。