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荒木絵里香が飛ぶと、守備が決まる。
止めるだけじゃないブロックの効果。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKoki Nagahama/Getty Images
posted2016/05/20 11:45
ロンドン五輪時の主将だった荒木の復帰は、真鍋監督をして「世界一を目指すために、(荒木という)化学反応が必要だった」と言わしめた切り札だった。
荒木は「まさに壁」。
リベロの佐藤あり紗も言う。
「まさに壁ですね。絵里香さんがブロックに跳んでいるところは、基本は頭に入れず、わたしは脇を抜けてくるスパイクに注意しています。あとはサイドにトスが上がって一瞬、遅れそうだなと思うような場面でも、絵里香さんは追いついてワンタッチを取ってくれるので、そこでも守備の範囲は限られてきますね。特にすごいのは、クロスのコースへのブロック。絵里香さんほど高さがあって、しかもパワーもあるブロッカーは日本にはいないので、絵里香さんの脇を抜いてクロスのスパイクを打つことは難しいと思います」
クロスには打ちづらいと判断できれば、そこでまたレシーバーの守るコースの選択肢がひとつ減る。こうして、後ろのレシーバーが守るゾーンの判断をしやすくし、ディフェンスシステムを作るのがブロッカーの重要な役割だ。
タイ戦のあと、終盤戦への課題を聞くと荒木はこう話した。
「ポイントが出ることがベスト。何度かポイントを逃したと思うボールがあったので、今後はそれを確実に取りたいですね。今日は、いいワンタッチを取れて切り返せたし、それを得点につなげられてよかったです」
全日本女子の課題は“サーブ力”。
では、韓国に敗れ、タイに苦戦した全日本女子の課題は何か。
それはサーブ力である。
1対3で敗れた韓国戦では、レシーバーの間をねらってくる相手のサーブに苦しんだ。逆に、日本のサーブはほとんど機能せず、サーブポイントは3にとどまった。
5セット目に6点差を跳ね返し、逆転勝ちを納めた18日のタイ戦は、相手監督のレッドカードによる失点など、波乱もあった。しかし9対12の3点ビハインドから、宮下遥のサーブでこの試合初めてとなるサーブポイントを奪う。続いて打ったサーブがきれいにセッターに返ると、センターからのクイックに荒木を中心とした3枚のブロックが反応。ワンタッチを取ってチャンスを作り、最後は石井優希が決めて11対12の1点差に詰め寄った。