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荒木絵里香が飛ぶと、守備が決まる。
止めるだけじゃないブロックの効果。
posted2016/05/20 11:45
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Koki Nagahama/Getty Images
ここまで4戦を終え、3勝1敗、勝ち点8の4位で大会終盤を迎える全日本女子チーム。ここまでペルー、カザフスタン、タイに勝利している全日本だが、チームの強みのひとつに挙げられるのが、荒木絵里香の加入によるディフェンス力のアップだろう。
大会初日、ペルー戦の記者会見で眞鍋政義監督が言った。
「荒木のブロックの横を抜くのは難しい。実際、データ上でも荒木がブロックのときのディフェンスの成功率が高い。目に見えない点数です」
荒木絵里香は前回のロンドンオリンピックに主将として出場し、全日本女子にとって28年ぶりとなる銅メダル獲得に貢献した。2013年に結婚し、その後、出産。一時、競技から離れた。2014年6月、上尾メディックスに入団。競技生活に復帰後は'14/'15年、'15/'16年V・プレミアリーグで2年連続、ブロック賞に輝いている。
そして今年、ロンドンオリンピック以来、4年ぶりとなる全日本に招集された。
荒木の存在のおかげで、守備範囲を絞れる。
ブロックは、どうしても派手なシャットアウトに目が行きがちだ。ただし、現代のバレーにおいて、ブロックポイントと同様に重視されているのが、ワンタッチを取って味方のチャンスボールにすることと、スパイクのコースを限定してレシーバーに拾わせること。どちらも一見目立たないプレーだが、ブロックとレシーブを切り離さず、トータルで“ディフェンス”だととらえる守備戦略が近年の国際舞台ではスタンダードとなっている。
全日本女子コーチの川北元氏は語る。
「荒木が前にいるだけで、相手のスパイカーにプレッシャーをかけることができます。まず、相手は荒木のブロックを避けて打ってきます。それに荒木がセンターブロッカーのときは、サイドブロッカーとの間を抜くことが難しいので、後ろで守っている選手は自分が守るべき範囲を割り切ることができるんです」