スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
0打数7出塁とカブスの驀進。
成功した「ハーパーを歩かせろ」。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2016/05/14 10:30
ブライス・ハーパーはメジャーに現れた久々のスーパースター。昨年は満票でリーグMVPを獲得している。
前後の打者を抑えればいい、という発想。
ただ、奇策を好むカブスの知将ジョー・マドン監督は、ハーパーとは勝負せず、彼の前後を抑えれば勝利はこちらのもの、と踏んでいたようだ。
最初の2戦、走者を置いてハーパーが打席に立ったのは1度しかなかった。7日の試合では、1死三塁が2度と2死一塁が1度。8日は、無走者が2度、1死一塁が1度、2死2走者が3度(4回表は2死二、三塁。10回表と12回表は2死一、二塁)。
最後の3例はすべて敬遠の満塁策。つづく4番のライアン・ジマーマンは、3度とも凡退している(三振、レフトフライ、サードゴロ)。つまり敬遠策はぴたりと的中したわけで、4試合で19打数2安打に終わったジマーマンは、完全なブレーキとなった。5番打者のダニエル・マーフィが4試合で16打数6安打と当たっていただけに、打順を入れ替えなかったダスティ・ベイカーの采配にも疑問が残るが、これはまあ結果論だろう。
現在24勝6敗、優勝した108年前と全く同じ。
とまあ、そんなわけで、4連戦が終わった時点で、カブスは24勝6敗、ナショナルズは19勝12敗の成績となった(後者はメッツに抜かれて東地区2位に転落)。
注目すべきは、もちろんカブスだ。開幕30試合でこの数字というのは、1907年、カブスがワールドシリーズを初制覇したときの数字とまったく同じなのだ。翌'08年、カブスは再度ワールドシリーズを制した。そして、以後107年、カブスは一度たりともワールドチャンピオンになっていない。
第1次世界大戦が終結した1918年以降に絞ってみても、開幕30戦で24勝以上を挙げた球団は、延べ10チームしかない(ヤンキースが3度、ドジャースが2度)。最近では'84年のタイガースが26勝4敗のロケットスタートを切り、年間104勝を挙げてワールドシリーズも制覇したのが記憶に新しい。
あるいは'55年のブルックリン・ドジャース。ロイ・キャンパネラやギル・ホッジスが活躍した時代の彼らは、25勝5敗の開幕ダッシュを見せ、シーズン98勝で、やはりワールドシリーズを制している。