スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
0打数7出塁とカブスの驀進。
成功した「ハーパーを歩かせろ」。
posted2016/05/14 10:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
ゴールデン・ウィークが日本で終わろうとしていたころ、シカゴのリグレー・フィールドは上を下への大騒ぎだった。
といっても、残念なことに、私は現場に居合わせたわけではない。あとで映像を見て、しまった、見にいっておくべきだったと思っただけの話だ。いまさら悔んでも仕方ないが、以前はこういう現場に遭遇する確率がもっと高かった。見ていた人は大威張りだろうな。
5月5日から8日にかけて、カブスはナショナルズに4タテを食わせた。連戦のはじまる前、両者はナ・リーグの最高勝率を争っていた。中地区首位のカブスが20勝6敗、東地区首位のナショナルズが19勝8敗の好成績だったのだ。
試合の結果を先に並べておこう。
5日(木)=5-2でカブス。
6日(金)=8-6でカブス
7日(土)=8-5でカブス。
8日(日)=4-3でカブス(延長13回)。
スコアだけを見ても面白そうでしょう。加えて、8日の試合では球史に残る珍記録が生まれた。ナショナルズの主砲ブライス・ハーパー(3番打者)が「0打数7出塁(うち6四球、1死球)」という、笑ってしまいそうな数字を残したのだ。
「ハーパーを歩かせろ」作戦は大成功。
1試合6四球を得た選手は、近代野球では過去に3人しかいない。1938年のジミー・フォックス(レッドソックス。対ブラウンズ戦で記録)。'84年のアンドレ・ソーントン(インディアンス。対オリオールズ戦)。'99年のジェフ・バグウェル(アストロズ。対マーリンズ戦)。フォックスは9回で6四球だったが、あとのふたりは、延長16回の試合での記録達成だった。
「敬遠」がレコードブックに特記されるようになったのは'55年以降なので、フォックスが得た敬遠の数はわからない。ソーントンとバグウェルは2つずつだ。ハーパーは3つ。
結論はすでに述べたようなものだが、「ハーパーを歩かせろ」作戦は大成功だった。彼は、5日に3度、6日に1度、7日にも3度歩かされた。4戦合計では、19打席、4打数1安打、13四球、1死球、1犠飛。もちろん、出塁率は一気に跳ね上がった。