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男子レスリングの五輪出場枠が半減!
ロンドンからの4年で何が起こったか。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2016/05/11 10:40
日本男子のエースと目される高谷惣亮。2014年の世界選手権では銀メダルを獲得。得意のタックルでメダルを手にできるか。
ソ連の崩壊が世界のレスリングの層を厚くした。
フリースタイルとグレコローマン合わせて4階級というのは直近の3大会と比べて最も少ないことになるし、ロンドンからは半減以下である。
かつてお家芸とも言われたレスリングで、日本がここまで苦しんでいる理由はどこにあるのか。
長い目で見れば、レスリング強豪国ソ連の崩壊によって多くの国が誕生したことで、国際大会に出てくる強い選手の数が増えたことがある。
さらに女子と違い、中東でもレスリングは盛んだ。近年は、新興国の中から急成長している国も増えている。
対する日本は、競技人口に厚みがあるわけではない。世界中の競技人口は約100万人と見られているが、日本では9000~1万人程度だと言われる。
その中にあって、かつては世界でも有数の強豪として存在感を放ち、近年も何とか五輪メダル獲得の歴史をつないできた。もちろん出場枠も得てきた。であればこそ、歴史的な変化だけを今回の苦戦の理由にするわけにはいかない。
攻撃的なレスリングを推奨するルール変更。
大きかったのは、2013年に国内でも導入された新ルールだ。レスリングがオリンピックから除外される危機に立たされたあと、より観て面白い競技にするために、大幅なルールの変更がなされた。
端的に言えば、攻撃的なレスリングの推奨である。日本選手が得意とするディフェンシブなスタイルは不利な状況に追い込まれた。昨年の世界選手権では総じて日本の選手は攻撃に課題があることが露見したが、新ルールに適合したスタイルの修正の点で出遅れた面もあったのではないか。