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レスターと岡崎慎司が成し遂げた偉業。
サッカーの構造そのものを覆した? 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byAFLO

posted2016/05/06 17:30

レスターと岡崎慎司が成し遂げた偉業。サッカーの構造そのものを覆した?<Number Web> photograph by AFLO

レスターの臨時収入は200億円を超えるとも言われ、選手全員にオーナーからベンツがプレゼントされた。

レスター自身にも、プラスのハプニングが続いた。

 ただし、いかにタイトルレースが波乱含みになり、かつ乱戦に乗じて浮上してくるはずの中堅チームまでばたついただけでは、歴史的偉業は達成できない。自分のチームにも、いい意味で予想外のハプニングが起きる必要がある。

 バーディーやマフレズが突然、ゴールを量産し始めて「確変」状態に入ったことや、岡崎がプレミア1シーズン目で完璧に順応したこと、カンテがプレミア屈指の潰し屋に成長したことなどは典型例だが、同じように「嬉しい誤算」となったのは、監督のラニエリだったのではないかという気がする。

 以前のラニエリはフォーメーションや戦術、選手の組み合わせ方を無闇に変え、壊れてもいない機械を壊してしまう「迷将」だとされていた。ましてやレスターの指揮を執るのが初となれば、悪い癖が顔をのぞかせても不思議はなかった。シーズン開幕前、レスターの優勝に5000倍のオッズがつけられていたのと対照的に、ラニエリに対しては、監督解任予想のカテゴリーで、本命とも言える16倍のオッズが付けられていた所以だ。

 だが実際には、ラニエリの采配に対する不満はチーム内から一切聞こえてこなかった。それどころか今年2月の時点では、プレミアの監督の中で、先発メンバーに変更を加えた回数が最も少ない監督にさえなっていた。

選手層の薄さがラニエリを「ぶれさせなかった」?

 では何がラニエリを翻意させたのか。スティーブ・ウォルシュを始めとする強化担当のスタッフが、100点満点に近い仕事をしたのは事実だが、独特なチーム事情が奏効したのも明らかなように思う。分かりやすく言うなら、今シーズンのレスターは、「こねくり回せるほど選手層が厚くなかった」からだ。たしかにインレルのように、主力クラスの中にもベンチを温める形になった選手もいなくはない。だがラニエリが「ぶれなかった」のは、物理的な制約条件も少なからず影響を及ぼしたはずだ。

 加えてレスターには、カップ戦に早々と敗退したことで、逆にプレミアの試合に集中できるという怪我の功名もあった。これは主軸組をフレッシュに保ちつつ、故障を回避するという効果ももたらしている。結果、シーズン後半戦には、ラニエリに対する信頼とチームの一体感が高まり、カウンターを軸とした戦術が、さらにこなれていくという好循環が生まれた。かくしてラニエリは解任候補の一番手から、歴史的な偉業を達成した名将に生まれ変わったのである。

【次ページ】 戦術的には、極めてベーシックな戦い方だった。

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