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レスターは「汚れたシンデレラ」か。
際どい転倒も肉弾DFも“箔”である。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2016/04/23 10:30

レスターは「汚れたシンデレラ」か。際どい転倒も肉弾DFも“箔”である。<Number Web> photograph by AFLO

シミュレーションと判定されたバーディーの接触シーン。PKを巡る判定は常に荒れるものだ。

アンリは「ダーティー」ではなく「クレバー」と。

 それでも、現実としてPK獲得を狙ったバーディーを一概に「ダイバー」と責めることは難しい。肉眼ではイエロー提示が酷と思われたことも事実だ。スローモーションで確認すれば、並走するアンジェロ・オグボンナの両足の間に自ら右足を入れて倒れたようでもある。しかし、現役時代に同様の場面を幾度も経験しているはずのティエリ・アンリも、バーディーの行為に対する解説者としての見解では、警告が妥当としつつも「ダーティー」ではなく「クレバー」という言葉を用いていた。

 一方、自軍ゴール前でのフートとモーガンの行動は「正当防衛」と言ってもよい。プレミアのピッチでは、セットプレー時の押し合いへし合いや掴み合いが日常茶飯事。31節クリスタルパレス戦(1-0)では、フート自身が、相手ゴール前で後ろから掴まれてユニフォームを脱がされている。今回のウェストハム戦でも、オグボンナにヘッドロックされて倒された。

 いずれもPKはもらえなかったことを考えれば、PKをとられたモーガンは運が悪いようにも思えるが、そこはお互い様。フートとモーガンは、それぞれウィンストン・リードとシェイク・クヤテの進路を妨害したファウルで、ウェストハムにPKによる先制機を与えていても不思議ではなかったのだ。

DFにとって、肉弾戦は絶対に避けられない。

 しかし、自軍ゴール前で守ってこそDF。特に、プレースキックも冴えるディミトリ・パイエがいるウェストハムはセットプレーが重要な得点パターンなのだから、体を張ってでも守るのが当然だ。

 しかも、レスター・ゴール前での肉弾戦が激しくなった後半、敵は空中戦で絶対的な強さを誇るアンディ・キャロルを投入していたのだから、ますます綺麗事など言ってはいられない。キャロルは、前週のアーセナル戦(3-3)でファーポストへのクロス3本を3得点に変え、その威力を改めて示したばかりでもあった。

 加えてウェストハムは、パイエのデリバリーに備えるキャロルの前に2~3名の盾を設けて、クロスにフリーで走り込ませようとしていた。となれば、盾となっている相手選手を力ずくで押し退けてでもキャロルを捕まえなければならない。キャロルを囮にクロスの落下地点に向かう第2ターゲットも逃がしてはならない。

【次ページ】 綺麗に戦ったアーセナルは、望みを絶たれた。

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