プレミアリーグの時間BACK NUMBER
レスターは「汚れたシンデレラ」か。
際どい転倒も肉弾DFも“箔”である。
posted2016/04/23 10:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
AFLO
「汚れたシンデレラ」
4月17日ウェストハム戦(2-2)で辛くも逆転負けを免れたレスターに立った評判だ。
奇跡の優勝に向けて、プレミアリーグは元よりスポーツ界全体でも最高とさえ言われる夢物語を演じてきたチームだが、ジェイミー・バーディーがシミュレーションに対する2枚目のイエローカードで退場した。
サクセス・ストーリーの象徴とされ、この試合でも得意のカウンターを綺麗に締め括って先制ゴールを決めたバーディーだったが、退場劇を演じると過去の試合でもPKをもらいにいっていたと言われるようになった。
チームの後方では、前週の33節サンダーランド戦(2-0)まで5試合連続の零封勝利を実現した守備の要に過度のフィジカルが指摘された。ウェストハムに反撃の狼煙を上げられた同点のPKは、ロベルト・フートとCBコンビを組むウェズ・モーガンが、後ろから相手に手を掛けたファウルに与えられたものだった。
しかし、この一戦でレスターの“シンデレラ・ストーリー”にケチがついたとは思わない。むしろ、優勝争いのリーダーとして箔が付いたと言えるのではないか?
あの場面でPKを意識しないストライカーがいるか。
もちろん、シミュレーションはシミュレーション。罰せられて然るべきである。バーディーが今季前半戦で達成した11試合連続得点のプレミア新記録には、自ら奪ったPKによる3点が含まれているが、僅かな接触でバランスを崩しても仕方ないと言わせるトップスピードの持ち主は、FWとして「PK獲得術」も磨いてきたに違いない。
チームが敗れたことから騒がれはしなかったが、26節アーセナル戦(1-2)でナチョ・モンレアルがバーディーを倒したと判断されたPKは、ウェストハム戦でのシーンと似ている。
とはいえ、相手DFと競りながらボックス内に侵入したあの場面で、PKを意識しないストライカーが実際にどれだけいるだろうか?
レスターにとっては、追加点が欲しかった後半早々、そして、勝てば目の前に見える「優勝」の二文字が一段と大きさを増す終盤34節での一場面でもあった。たしかに、左足からのシュートに持ち込んでいれば理想的だっただろう。バーディーは、角度のない位置から利き足ではない左足で、見事な先制のフィニッシュを披露してもいた。