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レスターは「汚れたシンデレラ」か。
際どい転倒も肉弾DFも“箔”である。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2016/04/23 10:30

レスターは「汚れたシンデレラ」か。際どい転倒も肉弾DFも“箔”である。<Number Web> photograph by AFLO

シミュレーションと判定されたバーディーの接触シーン。PKを巡る判定は常に荒れるものだ。

綺麗に戦ったアーセナルは、望みを絶たれた。

 その結果としてモーガンが与えたPKであるが、CB当人はもちろん、監督のクラウディオ・ラニエリも、チームメイトも、そしてキングパワー・スタジアムを埋めた3万人のファンも、判定に対する不満は別として、キャロルに楽々とヘディングを許すぐらいならファウル紛いの抵抗を好むに違いない。

 前節でのアーセナルは、まるで肉弾戦を恐れるかのようにCBコンビがキャロルとの間に距離を空けてしまい、逆転優勝への一縷の望みを絶たれた。その点、フィジカルにフィジカルで対抗したレスターは、後半ロスタイムを含む40分間弱を10人で戦うことになっても崩れ去ることなく、最終的には「1ポイント獲得以上の意義がある」とラニエリが評する引分けで試合を終えた。

 指揮官は、「我々は最大限の力を振り絞って戦っている。より良い内容で、より多くポイントを獲得するチームが現れれば素直に讃えたい」とも語っている。潔い発言だが、その「最大限」の中には「狡猾さ」も含まれているということだ。美しい“シンデレラ・ストーリー”の主役は、カウンターからバーディーが颯爽と敵陣内を駆け抜けて鮮やかにネットを揺らすだけのチームではない。

バーディー不在は岡崎にとってチャンスか。

 狡猾な一面を罰せられたバーディーは、退場処分に不服を唱えたかどで出場停止が2試合に増える可能性もあるが、代役にはウジョアと岡崎慎司がいる。ウジョアは、昨季のエース格から控えに降格しても腐らず、後半にベンチを出たウェストハム戦でも守備もこなしながら土壇場で同点のPKを決めた。

 2トップの一角に定着した岡崎のハードワークはバーディーとウジョア以上。バーディーが1枚目のイエローをもらう直前、より警告対象に近いようにも見えたタックルを仕掛けていたように、体を張ることも厭わない。

 試合後には「自分にはチャンスだと思っているんで貪欲に狙っていきたい」と、岡崎。バーディー欠場の穴を埋める意気込みを見せ、巷では「実戦では11分間だけ」と不安視されるウジョアとの2トップに関しても、「練習ではレオとのコンビも上手くいっている」と頼もしかった。

 残り4試合、2位トッテナムと5ポイント差で首位を走るレスターに求められるものは、華麗なフィニッシュではなく、プレッシャーに屈することなく死に物狂いで走り切る姿勢。後半戦でしぶとく僅差の勝利を重ねてきたレスターは、6連勝こそ逃したが数的不利を背負いながらも逆転負けを阻止した一戦で、形振り構わず優勝へと足を進める気概を示した。

 ダーディーなのではなく「闘うシンデレラ」は、今季プレミア王者となるに相応しい。

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