オリンピックへの道BACK NUMBER
20歳の若者、そして国の代表選手。
桃田の「判断力」を改めて考える。
posted2016/04/20 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
バドミントンの田児賢一、桃田賢斗両選手が違法カジノ店で賭博行為をしていたことが報じられたのは、4月7日のことだった。
その後、両選手は記者会見を開き、所属のNTT東日本が田児を解雇、桃田を出勤停止30日、さらに賭博行為をした他の計6名の部員(OB含む)を厳重注意処分、男子バドミントン部を半年間の活動停止処分とした。
4月7日付けで世界ランキング2位だった桃田は、リオデジャネイロ五輪出場もかなわなくなった。
今回の一件では、「日本代表として活躍しているのに」、「21歳にもなってなんで分からないのか」といった反応もあるが、個人的にはっとした出来事があった。
ある選手から、こう聞かれたのである。
「結局、バドミントンの件はなんであそこまで問題になっているんですか」
よくよく聞いてみると、競馬、競艇などの公営競技と、今回の裏カジノ問題の区別がつかず、いっしょくたになっているようだった。
その選手は、海外の大会にも出たことのあるトップ選手だ。年齢は20歳を少し超えたくらいだが、社会人の選手でもある。
20歳くらいの若者にどれほどの知識を期待できるのか。
そのやりとりのあと、大学の先生から聞いた話を思い出した。
いわく、アメリカと日本が戦争をしたことを知らない、日本に原爆を落とした国がどこなのかを知らない、そんな学生が決して少なくはないという。歴史のみならず、日々のさまざまなニュースについてもあまり知らない。社会的な通念であったり、簡単なルールも把握できていない選手もいるそうだ。
戦争や原爆の話は、直接学生との会話で聞いたこともある。だから先生の話は、「そうだろうな」と納得して、そこまで驚きはなかった。自身の20歳前後を振り返っても、どれほどの理解力や判断力があったか、心もとないのが正直なところだ。