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A代表よりU-23の方がハリルの好み?
データで見る「速い攻め」の差とは。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAsami Enomoto
posted2016/04/08 10:30
代表では守備的な役割を大きく担う長谷部誠。彼の前への推進力を生かすシステムは構築できるか。
シュートまでにかける時間が圧倒的に短いU-23。
(3)ボールを奪ってからのシュート・ゴールのデータからは、両チームのフィニッシュに対する意識やシュートへの持っていき方の差が明確に出ている。ボールを奪うエリアはともにミドルサードが多いが、経由時間別シュート数を見ると、U-23代表は経由10秒未満でのシュート(54.8%)が50%を越えており、ゴール(63.6%)に至っては60%を越えている。
W杯のデータでもセットプレー以外、多くのゴールパターンがボールを奪ってから10秒未満で生まれている。実際、リオ五輪最終予選イラク戦では相手のバックパスをカットした後、サイドを疾走した鈴木武蔵のクロスを久保が決め、素晴らしいカウンターを見せた。このように、U-23代表はボールを奪ってからの攻撃が非常に速い。
U-23代表の速く攻める意識は、90分換算パス数ランクからも見て取れる。U-23代表の平均は38だが、A代表は61とU-23代表のほぼ倍である。もっともA代表の場合、W杯2次予選では格下が相手となり、相手が引いて守ることが多い。スペースがなく、プレッシャーも厳しい。その中でボールをキープしたり、サイドをチェンジしたりして自分たちで攻撃を考えてプレーしている。その結果、時間がかかり、パスする回数が増えているのだが、ボールを持てるので攻めあぐねてしまうこともある。
トーナメントとホーム&アウェイの差もあるが。
逆にU-23日本代表は、ポゼッションにこだわらない。リオ五輪最終予選でも、相手にボールを握られている時間が長かった。それでも動じずに自分たちの土俵に相手を引っ張りこんで勝負していた。戦術を徹底した潔さが確固たるスタイルとゴールを生んだと言えよう。
こうした違いが出てくるのは、トーナメントとホーム&アウェイという異なる大会形式の影響もある。トーナメントの場合は、勝たないといけないので点を取りにいく必要があるし、相手も仕掛けてくる。相手が前に出てくる分、奪って素早く前へという攻撃がハマりやすい。
ホーム&アウェイの場合、アウェイでは勝ち点1でいいという割り切りができる。相手が無理をしないので必然的に日本がボールを保持できるようになるが、スペースがないのでなかなか効果的な攻撃はできない。そのためパスの回数がどうしても増えてくる。