オリンピックへの道BACK NUMBER
「曲げるスイープ対応」と情報共有。
カーリング世界銀を支えた日本の絆。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/04/03 10:30
左から、代表コーチのリンド・ジェームス(カナダ)、本橋麻里、吉田夕梨花、鈴木夕湖、吉田知那美、藤澤五月。
ショット間での緻密な情報共有が支えた正確性。
しかしLS北見は、その揺れにチームとして対応することに成功した。その対応力は、どこから生まれたか。1つには、大会へ向けての対策があっただろう。スキップの藤澤五月は言う。
「世界選手権に向けて、不利にならないようにテストをして、万全の体制をとれたからこその結果だと思います」
もう1つの手がかりは、吉田知那美の言葉にある。
「大会を前に、何度も何度も討論を重ねました」
試合後のインタビューでは、何度も「コミュニケーション」という言葉が聞かれた。
今大会に限らず、LS北見の選手たちはこれまでもコミュニケーションの大切さを語ってきた。大会を前に、いやシーズンの前から、話し合ってきた。そこで意思統一は計られていった。ブラシの規定の変更に対応できたのも、そんなチーム力あってのことにほかならない。
氷上での様子は、コミュニケーションを大切にするチームの姿を表していた。ショットの合い間を見つけては、細かく、互いの得た感覚を話し合い共有する。アイスの読み、ショットの正確性はそこから生まれていた。
ロコ・ソラーレ北見は、2010年8月に創設され、6年目を迎えたチームだ。1から、いや、ゼロから立ち上げたと言っていい状態からスタートしている。資金面も含め、その足どりが楽であったとは決して思わないし、容易ではないときもあっただろう。その中で継続してきたからこその今日がある。
裏方に回った本橋麻里の献身。
チームを立ち上げた本橋麻里は、試合をコーチ席から見守っていた。本橋は言う。
「選手には感謝、感謝です。結成をして6年目での結果。遅い結果ではあるかもしれないけれど、時間をかけてよかったと思います」
その本橋の大会でのサポートを、選手たちはこう語る。
「選手以外のことをやらなくていいくらいやってくれて、気持ちよくプレーできましたし、細かいところまで見ていて、ちょっと変化があったらポジティブに声をかけてくれました」(セカンド鈴木夕湖)
「(大会前の)結果が出ない長いミーティングのときも、ずっとうなずいて誰の意見を否定することもなく聞いていて、話が行き詰ってしまうと、私たちの心を感じて言葉をかけてくれました。大会ではいつもどおりの笑顔で、毎日毎日いろいろな種類のお鍋を、飽きないように味付けを変えながら、食材も買いに行って作ってくれましたし、かわいらしくフルーツをカットしてくれたり、重い荷物を運んでくれました」(吉田知那美)
「選手として出られない悔しさはいちばんあると思うんですけど、その悔しい思いをサポートに費やしてくれた。予選で負けて私が落ち込んでいるときに、スキップの孤独さとか理解して受け止めてくれました」(藤澤)
チームを6年にわたり牽引してきた、そして大会で献身的にサポートにあたった本橋の存在もまた、チーム力の1つだったのだ。