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氷の読み、正確性、第1エンド後攻。
世界銀のカーリング女子は黄金時代。

posted2016/03/30 10:30

 
氷の読み、正確性、第1エンド後攻。世界銀のカーリング女子は黄金時代。<Number Web> photograph by AFLO

決勝の最終ショットを悔やんだ藤澤五月だが、彼女の存在なしにここまでの成績は決して実現できなかっただろう。

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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AFLO

 カーリングの世界選手権で、女子の日本代表、ロコ・ソラーレ北見が準優勝した。

 まさに快挙である。

 日本でカーリングが大きな注目を集めたのは、ちょうど10年前。トリノ・オリンピックで当時のチーム青森がカナダに勝ち、小林宏氏の分かりやすい解説も手伝って(先日、他界された。合掌)、この競技の面白さに目覚めた人も多い。私はオリンピックの後、小林氏に師事して、素人カーリングを始めたほどだった。

 今回の日本の躍進は特別な意味を持つ。平昌オリンピックへの出場ポイントが加算される世界選手権で(今年と来年の大会の合計ポイントで上位7チームに出場権が与えられる)、日本は2位で12ポイントを獲得。前回のソチ・オリンピックでは2年間で9ポイントの韓国が出場しているから、ほぼ出場権を手中にしたと言っていいだろう。

藤澤の読みが、カーリング界のスターを上回った。

 では、日本のどこが躍進の要因になったのか、考えてみたいと思う。私が挙げたいのは、次の3つだ。

●アイス・リーディング(氷の読み)
●ショットの正確性
●第1エンドでラストロックを持ったときの強さ

 カーリングは刻々と氷の状況が変化し、曲り幅やストーンの伸びに影響を与える。印象的だったのは、カーリング界の大スター、イブ・ミュアヘッド擁するスコットランド相手の試合だった。

 日本のスキップ、藤澤五月はアイス・リーディングで完璧にミュアヘッドを上回った。1エンドで3点を獲得し、2エンドでは相手を劣勢に追い込み、プレッシャーのかかる状況を作って1点を取らせた。

 この時点で、明らかに氷の読みで藤澤が一歩先んじており、他のメンバーの技量もそれに応えた。そしてついにはスコットランドを「コンシード」(囲碁、将棋で言えば「投了」に当たる言葉)に追い込んだ。

【次ページ】 読みは、ショットの正確性によってさらに機能する。

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