錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

今年こそほしいマスターズのタイトル。
錦織が勝ち上がるためには何が必要? 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byManuela Davies / Mannys photography

posted2016/03/29 17:00

今年こそほしいマスターズのタイトル。錦織が勝ち上がるためには何が必要?<Number Web> photograph by Manuela Davies / Mannys photography

チリッチの身長は198cm、イズナーは208cm、ジョコビッチは188cm。試合を楽しめたドルゴポロフは183cmだった。

勝利より楽しさを優先してしまう性格。

 何がなんでも勝ちたいというより、プレーをする楽しさ、お客さんに喜んでもらうという楽しさが勝ってしまうタイプの選手がいる――時々、そんな話を元プレーヤーなどの口から聞くことがある。〈Underachiever〉の面々はどうもその手のタイプのようで、観客を喜ばせるプレーが自在にできる才能があり、盛り上げ上手のエンターテイナー。確かにモンフィスなどその最たるものだろう。

 そして錦織はなんだかこの手のタイプとプレーするときが楽しそうだ。ひょっとしたら錦織自身にもその傾向が……。今後キャリア・ハイを塗り替える可能性が十分ある26歳という年齢ゆえ、まだ評価は早い。178cmという体格でグランドスラムもマスターズも準優勝経験があるのは十分にすばらしい実績だと考える人もいるかもしれない。

 しかし、やはり2014年のあの全米オープン決勝はマリン・チリッチではなく錦織が勝つべきだったという見方が海外メディアやファンの間でも大半を占めるし、10代の頃からプロの目に見込まれていたポテンシャルの高さを考えれば、錦織が目標の一つと言っているようにマスターズ・シリーズのタイトルは今年こそ欲しい。

「チョンってやったらサーブ入りますからね」

 「テニスが球出しから始まる競技だったなら、錦織はとっくにグランドスラム・チャンピオンになっている」と言ったのは、元世界1位でESPNの解説者としておなじみのマッツ・ビランデルだった。

 サーブの強化はもちろん錦織が何年も取り組んでいるもので、その成果はスピードにおいても球種やコースにおいても表れている。フォームに改善の余地があると言われているが、やはりサーブの得手不得手と身長との関係は大きい。

 テニスは大きければいいというものではないが、インディアンウェルズの4回戦で208cmのジョン・イズナーをなんとか倒したあとも「もうちょっとリーチが欲しい。サーブはデカいほうが角度もつけられて有利だと思う」と話し、「いつもイズナーとかと試合するとき思うんですけど、あいつらチョンってやったらサーブ入りますからね。そのへんは納得いかないですね(笑)」と続けた。「チョン」には軽くジェスチャーをつけて冗談めかしながらも、ちょっと恨めしそうだった。

【次ページ】 ビッグ5に勝つために必要な“持続力”。

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